飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「月とライカと吸血姫 2」感想

月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフは、実験体の吸血鬼イリナを監視する任務から解かれ、晴れて宇宙飛行士候補生に復帰。「人類史上初の宇宙飛行士」の座をかけた選抜試験に挑み、ライバル達と鎬を削る。一方、イリナに不穏な空気が忍び寄る。「実験体は用済みだろう。廃棄処分を」。昼と夜、すれ違うふたりの運命は。―宇宙開発の黎明期であり、最前線。様々な思惑に翻弄されながらも、命懸けで遙か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。

どうやら世間的には3巻の発売日のようでした。これは2巻の感想になりますのでお間違えのないようにお願いします。うん、紛らわしい。

正直、イリナが宇宙に行ってしまっているので「これから何をやるのだろう?」と少し疑問ではあったけど。今度はレフくんの番という。

レフがライバルたちを破り、ついに宇宙飛行士へ。しかし宇宙に対する純粋な想いがどんなに強くあっても。政治的な、しかも国家レベルの謀が付き纏う。イリナもその陰謀の中で命を狙われていて、助け出す意志を持つのはレフただ一人の状況。レフはただの傀儡としての英雄でいることを拒み、イリナのため真実を口に出す姿はまさに男ですわ。同時に良い意味でバカな人だとも思う。

人類で初めて宇宙にいった人。それが嘘だということはレフは分かっていて、その嘘とこの一冊を通して悩み戦った。結果、好転したのはレフの情熱が他人を突き動かしたからか、それともその結果もまた陰謀に過ぎないのか

レフとイリナ。一緒に月に行きたいという新たな願いを掲げ、次なる展開へ。放置気味だった連合王国側も動き出して楽しみな流れだ。

「月とライカと吸血姫」感想

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。ツィルニトラ共和国連邦の最高指導者は、人間をロケットで宇宙に送り込む計画を発令。その裏では、実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。閉鎖都市で訓練に励む宇宙飛行士候補生のレフは、実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナの監視係を命じられることになる。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、ふたりは命懸けで遙か宇宙を目指す。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ。

このライトノベルがすごい!2018」文庫版にて第4位になった本作。その前から良い評判は聞いていたので安心して読みにいけた。余談ですが、読み終えてからタイトルの「吸血姫」を「ノスフェラトゥ」と読むことに気づきました。横文字ルビタイトルあるあるです。

二つの大国。ツィルニトラ共和国連邦とアーナック連合王国は人類未踏の地である宇宙を目指し、熾烈な開発競争を繰り広げていた。共和国が人工衛星ロケットと共に犬を打ち上げ、続いて月の調査に成功する。次の目標は人類が宇宙に上がること……連合王国よりも先に有人ロケットを打ち上げたい共和国は、実験のため人間の代わりに吸血鬼を送り込む「ノスフェラトゥ計画」を発動。共和国の宇宙飛行士候補生・レフは実験体である吸血鬼の少女・イリナのお目付け役に選ばれるのだが……。

イラスト担当のかれいさん、コミカルな感じのイメージがあったけど、この表紙は素晴らしいなあ。タイトルをしっかり一枚のイラストに落とし込んでいる。良きかな良きかな。

はい、それでは感想です。
「吸血姫」というタイトルを見てイメージした内容とは随分違かった、というのが最初に思ったこと。吸血鬼を扱う題材として宇宙を持ってくるのは素直に驚きました。作中での吸血鬼の設定も、血を吸うことがある以外は、まあそれほど人間と大差がないというもの。吸血鬼に向けられる差別と偏見。主人公のレフもまたその一人であったが、可愛く、また意志の強い吸血鬼少女のイリナと接する内にその考えを改め、それどころか彼女を守りたいと思い抱くようになる。

青春。これはレフとイリナの青春劇。そして二人が追いかける宇宙という夢。とてもとても青臭い物語で、丁寧の綴られた言葉たち……ページが進むごとに二人の距離が縮まって行く様をニヤついた顔で追いかける。でも青春や夢だけで生きられるほど、レフとイリナの周辺は穏やかではなく、国家の謀略、あるいは勝手な都合というのか。二人はその渦に飲み込まれようとする。人と吸血鬼。分かりあい、心を繋いだレフとイリナの情熱溢れる青春に心が熱くなってくる。

「約束のネバーランド」感想

約束のネバーランド 1 (ジャンプコミックス)

〈あらすじ〉
母と慕う彼女は親ではない。共に暮らす彼らは兄弟ではない。エマ・ノーマン・レイの三人はこの小さな孤児院で幸せな毎日を送っていた。しかし、彼らの日常はある日突然終わりを告げた。真実を知った彼らを待つ運命とは…!?

このマンガがすごい!」の男の子部門1位らしいというので名前は知っていたのですが。ラノベに対する自分自信のアンテナも疑わしくなってる昨今、マンガについてはもうほとんどついていけない感じです。歳をとりました。嫁さんが購入したのだけど、買った本人よりも先に読んだという……。

孤児院で暮らす少年少女たち。ママと呼ばれる女性から愛情たっぷり育てられた子供たちは里親に引き取られるまで……孤児院にて幸せに暮らしていた。「孤児院の敷地から外に出てはいけない」「毎日特殊なテストを受けなければならない」というルールはおるものの、年長の少女・エマは同じ歳で特に仲の良いノーマンとレイと共に遵守し、テストでは優秀な成績をおさめていた。しかしある日、ルールを侵したエマとノーマンは見てしまう。里親に出されたばかりの妹分が殺されているところを。そして知る。孤児院の正体が、異形の「鬼」たちが食べる「人間飼育場」だったことを。愛しいママは子供たちが出荷されるまでを見守る管理者であることを……事実を知ったエマとノーマンはレイを仲間に加え、孤児院からの脱出を試みるのだが……。

あらすじ=設定は大好物なサバイバル系ですね、ということで既刊7巻まで一気に読みました。エマとノーマン、レイの子供とは思えない体力・知力と胆力をフルに活かし、ママことイザベラを裏をかこうと奔走する。しかし才能を発揮する子供たちを育てたイザベラは一枚も二枚上手で簡単には脱出を許さない緊迫した展開が描かれている。

鬼たちは何者なのか? 鬼に準じているイザベラのような人間は何を考えているのか? 脱出した先……外の世界はどうなっているのか?

気になる疑問がドンドン出てくる中、週刊連載だからか、思ったよりも展開のスピードが遅かったのはヤキモキ。20巻くらい出てから読むとスピード感が出て更に面白くなるのかも。キャラクターも多いので、各々の活躍の場はこれから増えて行くんだろうなあ、と。期待という意味ではこれからが楽しみな作品でした。それと女主人公なのも新鮮で良し。

「灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た」感想

灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
──やらなきゃいけないことを、やる。やるんだ。今は。歯を食いしばり、両足を踏ん張り、グォレラたちの襲撃に再び向き合うハルヒロ。
彼は、使命で自分を奮い立たせ、"彼女"の死という現実から目を背けようとしていた。
そして、抱えきれない後悔と絶望を前にした時、謎の男・ジェシーが囁く。「方法ならある。一つだけ」と。一方、フォルガンを脱退したランタは、世話役であったタカサギの追跡から必死に逃げていた。千の峡谷(サウザンドバレー)で、いつ終わるともしれぬ逃避行。体力と精神が限界に達しようとした時、ランタの脳裏を去来したものとは……?

大切な人を失ったと思った。でも戻ってきた……正直、マナトとモグゾーに続いてメリイまでいなくなってはもう心が持たなくなる。

なのでこの結果で良かったかと。あとランタについては、まあランタだからどうにでもなるでしょう。

「灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない」感想

灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
ある義勇兵が深い傷を負い、山中で一人その人生の終焉を迎えつつあった。
死に間際、彼は思い出す。元いた世界の残滓を。そして、疑問を抱く。
――この“グリムガル”という世界とはなんなのか? と。
一方、千の峡谷(サウザンバレー)を抜けオルタナを目指し東へ進んでいたハルヒロたちは、道中の森で、巨大な猿のようなモンスター・グォレラたちの襲撃を受けていた。レッドバックというリーダーに率いられたグォレラの群れに苦戦を強いられる。辛うじて追撃を振り払い、逃げ込んだのはオークの出来損ないが隠れ住む村だった……。

不可思議なジェシーの登場によって、少しだけ「グリムガル」と、この世界にやってきた人たちの背景が描かれていく。まあなんというか、毎巻毎巻そうだけど忙しい展開だよねえ。生きることに必死で、生きるために戦い続けている。

なので、最後の展開には「えっ?」と思うとともに、口絵イラストのメリイはフラグだったと。でも驚いたものの悲観的にならないのはジェシーという存在がいたから。ああ、やっぱそうなるよね、というラストだったので希望が持てます。好きなキャラだからそのままフェードアウトは勘弁です!

「灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ」感想

灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
何度おなじ過ちを犯せば……おれたちは……。
ジャンボという名のオーク率いるフォルガンとの戦いが混迷を極める最中、ハルヒロたちはかつてない危機を迎えていた。ランタのフォルガンへの寝返り。そして、一人また一人と散り散りになっていく過酷な撤退戦。パーティのみんなの安否がわからないまま、ハルヒロたちは自分たちにとってパーティの仲間が、どんな存在だったかを再認識していく。失いそうになってはじめて知るそれを、ハルヒロたちは本当に失ってしまうのか、それとも――。
霧深き千の峡谷(サウザンバレー)で、“孤独”という敵と相まみえる時、灰の中から生まれし冒険譚は新たな一幕を紡ぎはじめる。

ランタがいなくなった。それがショックなのが、意外といえば意外な感情ではあるけれど。人には情がある。繋がりを求めたいという想いがある。傷ついて、亡くして、ここまで歩んできた彼等は……家族同然の間柄になっていた。

まああれだけの時間を共有していれば、そうだろう。特に今回のように仲間がバラバラになっていれば、余計にその感情が込み上げてくる。苦難の連続の中で、しかし挫けることだけは亡くした仲間のためにもあってはなず、進み続けていくハルヒロたちの姿は眩しい。いや、本当に辛い時間が続くねえ。