「ブラック・ブレット―神を目指した者たち」感想
ブラック・ブレット―神を目指した者たち (電撃文庫 か 19-1)
- 作者: 神崎紫電,鵜飼沙樹
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: 文庫
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「彼女たちはつまらないことで泣き、笑い、スネて、柔らかくて人間のぬくもりに満ちている。彼女たちが虫けらだと? アイツ等は人間だ。俺は――里見蓮太郎は藍原延珠を信じる!」
異形の生物『ガストレア』との戦争に敗北して人類。ガストレアが侵入出来ないよう国土の一部を特殊な壁で囲み、狭い世界で生きることを余儀なくされた人類であったが、ウィルスを保持するガストレアに体液を送り込まれると感染し、その人間もまたガストレアとなって人を襲うという無慈悲な状況に置かれていた。人類滅亡の危機に瀕する中、ガストレアを駆逐する『民警』の仕事に就く主人公・蓮太郎とその相棒である10歳の少女・延珠、そしてその上司である木更をガストレアから世界を救う希望となれるのか、というお話。
あまり感想に『あらすじ』を書く質の人間ではないですが、『ブラック・ブレッド』を手に取ったキッカケが、ザッと読んだだけで分かる『救いのない世界観』にあるからです。
『呪われた子供たち』と呼ばれる延珠を始めとした超人的な力を持つ子供たちは、緩やかにガストレアウィルスに侵されているため、ガストレアに関わる者として差別の標的にされる。人類の敵であるガストレアだけでなく、差別というもうひとつの敵とも戦う蓮太郎と延珠の姿がまた心を苦しくさせる。
ガストレアを駆逐する身体にされてまで生きる蓮太郎と、ガストレアによって生まれた瞬間から自分の運命が決定付けられた延珠の、苦しみながらも前を見つめて進み続けなくてはならない二人の物語から目が離させない。