飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「花咲けるエリアルフォース」感想

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)


「だからわたしは、逃げない。泣くところも見せない。わたしのために死んだすべての者たちのために、もう二度と、泣いたりしない」

皇国と民国に二分された日本で、皇国軍の特殊な戦闘機で空を駈る、淡く切ない少年少女たちの物語。
二つの国が開戦したその日、世界中のソメイヨシノの命が尽きて枯れていく中、ソメイヨシノを枯れされまいと強く願った子供たちは樹の時間を止め、特殊な結びつきを見せる。生き残った9本のソノメヨシノを介して意識を繋げ、異形の戦闘機『桜花』を操る主人公・佑樹や桜子たち『接続子』と呼ばれる少年少女たちの戦いは、身体よりも心を傷付けられ、挫けそうになりながらも、それぞれの想いのために立ち止まったりはしない。皇国の帝である桜子自ら先陣に立ち、桜花を使い多大な戦果を上げ国民を奮い立たせるも、帝である前に14歳の少女でしかない桜子の内心を押し殺した姿が痛々しい。接続子であり心が時に繋がる佑樹に強がり続けることが出来ず、ついには心中を吐露することで桜子と、それを受け止めた佑樹も強くなったのだと思う。戦争に身を委ねる子供たちに何処までも酷な運命を与え涙を流しながら乗り越えていく姿と、そんな流れに反発するような平穏そのものの学園生活の描写が『花咲けるエリアルフォース』の魅力かな。
追記:先帝にグッジョブ!と言いたい。