飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と紫の約束」感想

シュガーアップル・フェアリーテイル  銀砂糖師と紫の約束 (角川ビーンズ文庫)

シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と紫の約束 (角川ビーンズ文庫)

「かかし頭は、なんでもすぐに忘れる」
意地悪な睦言のように、声が甘い。耳たぶまでに軽く触れるようにして、そこに口づけた。
「これだけは覚えておけ。ずっと、そばにいる。おまえを守る。誓う」

ペイジ工房の職人頭となったアンが新聖祭の砂糖菓子作りのため、城を借りてそこで仲間達とともに作業をすることになるが、その城には幽霊が住み着いて大騒ぎになる今回のお話。
落ち目のペイジ工房を復活させるために新聖祭の砂糖菓子作りは絶対に失敗できない中、職人頭としてアンが、愛するシャルに支えられながら重大な責務に挑む姿に彼女の成長を見る。前回に引き続き今回は謎の妖精グラディスを連れて現れ、周囲に迷惑をかけるブリジットは構って欲しくて仕方のない子供そのもの。本来ならばブリジットはアンよりも恵まれているはずなのに、成長を続けるアンとは対照的な立ち位置になってしまい、ここまで行くと哀れとしか思えない。
幽霊の正体であり、いなくなった城の主人を長い間待ち続け疲弊した妖精ノアは食料提供など頑なにアン達の好意を拒むが、アンはノアという妖精の在り方を見つめ、熱い想いを込めて作った砂糖菓子がノアの心を響かせ、彼に砂糖菓子を食べさせる。誰にでも熱く暖かく接するアン。砂糖菓子対決をしたヒューが『負け』を認めたのは技術ではなく、アンの『ハート』に対してだろう。
そんなアンに惹かれるシャルはいつになったらアンに手を出すのですか?
完全に両想いの二人を遮るのが『人間』と『妖精』という別種族だという倫理的な問題だけで、いつ関係が転がってもおかしくはないね。
正体を現したグラディスとシャルの対決で今回は幕を引いてしまったので続きが気になる。