飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「美少女を嫌いなこれだけの理由」感想

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

「あまり……痛くしないでくださいね」
そこから先、言葉を紡ぐことはできなかった。サブさんがさせなかった。抱き寄せ、喉元に牙を立てた。血を吸いあげる音だけだ。誰も言葉を挟むことはできない。かび臭い体育館、チープな照明、舞い踊る埃。それでも、抱き合う男女の美少女の、なんと美しいことか。一口吸うごとに、サブさんにエネルギーが満ちていくのが分かる。

タイトルのインパクトもあるが、第2回このライトノベルがすごい!大賞の『栗山千明賞』受賞作品ということで一体どんな内容なのかとドキドキしながら読んだ。
結論をいえば、面白かった。そして設定が…頭おかしかった!

まず読み始めてからの流れが戸惑う。キャラクターの描写と口調が全く噛み合っていない。『美少女』がいるはずなのに、お爺ちゃんとオッサンの日常会話が続くのは何故なのだろうか、と。
設定を読んで、もう笑うしかなかった。
『美少女』吸血鬼のサブさん(40歳代♂)と『美少女』眼鏡っ娘のイロハ(70歳代♂)をサポートする役に就任した『美少女』と『人間』のハーフである雄介(見た目通りの高校生♂)が、見た目と中身のギャップに苦しみながら『美少女』たちに振り回されるお話。

そう、この物語には『人間』と『美少女』という二種族がいて、見た目が美少女であっても中身は老若男女。『美少女』のお爺ちゃんと『美少女』のオッサンがいる世界。うん、頭おかしい。黒兎さんの挿絵が素晴らしいだけに余計そう思うよ!
しかし『美少女』の男と『人間』の女の間に生まれたハーフという設定は…どういうことだってばよ。
と思ったら、ぼかすことなく説明するのね。なるほど、これは子供作れる。
サブさんとイロハだけでなく、他にも魅力的な『美少女』が登場しドタバタと面白可笑しく物語を展開して、最後にはお約束の方法で物語を綺麗に閉じているのが良かった。
ただ設定の奇抜さだけではない、しっかりしたお話で本当に楽しんで読めました。