飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「エトランゼのすべて」感想

エトランゼのすべて (星海社FICTIONS)

エトランゼのすべて (星海社FICTIONS)


この庭さんの表紙イラスト、最高ですね。
読み終えて込み上げてきたのは「京都に行きたい!」…以上に「大学生に戻りたい!」という、胸を掻きむしりたい渇望の気持ち。
二度と取り返せない時間。あの何者にも縛られない大学生活を見事描ききった。

大学生活に夢を持ち、大量の新歓のチラシを見ながらさてどのサークルに入ろうかと悩み、最終的には『京都観察会』なるサークルの新歓に参加して、そこで出逢った美しくも不思議な『会長』と呼ばれる女性に惹かれて入ることに。一部の熱い学生たちとは違い、活動内容のないサークルに顔を出して仲間と交流し、帰ってはバイトに精を出す生活は、あの時間を『大学生』という時間を過ごした者にしか表現することは出来ないと思う。『京都観察会』のひとりひとりに歴史ありと感じるほど、問題児ばかりのサークルで彼等と触れ合い影響され経験を積み、一年を通して主人公の針塚が成長し自立する姿を追っていると、自分のことでもないのに胸が苦しくなってくるのは何故だろうか。淡々と描かれる針塚の大学生活の最後に用意されていた『京都観察会』と会長の秘密ではあったが、この一年間でその秘密を受け止める心を針塚が持ち、会長に男らしく言い返せたのは良かった。だた会長の言うとおり勿体ないことしたな、とは思ったけど。

しかし新会長とり二年生の生活を送る針塚が、会長ではなく中道さんに惹かれ始めている描写は一読者として受け止める準備が出来ていませんでした。ある意味でこれは驚きのオチだったなぁ。