「桜色の春をこえて」感想
- 作者: 直井章,ふゆの春秋
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/11/10
- メディア: 文庫
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ひとりぼっちだった二人の少女が出逢い、奇妙な同居生活から友情を育む青春小説。
物語の大半をこの二人の少女を中心に描かれていることから百合要素のある作品、と言われてはいるものの、百合よりも友情の方が要素としては強い気がする。ただ「それを含めて百合って言うんだよ!」と言われてしまえば「あ、そうですか」と返すしかないのですが。
まったく性格の違う女子高生の二人、真世と澄多。春を迎え、高校に入学しアパートを借りて新生活を始めた真世であったが、手違いによってアパートに住めなくなり一転どん底へ。その窮地を救ったのが、学校でも有名な不良少女である澄多。何でもないかのように真世を部屋に迎え入れた澄多は、一緒に生活してみれば容姿から分かるようにスボラ。生活能力皆無の澄多の世話をする真世の『妻』っぷりは確かに百合的でニヤニヤしてしまう。同居生活を通して、留年までしている澄多という年上の『不良少女』が決して周りが噂するような人物ではないことが分かり、更には似たような家族に関わる過去を――心の傷を負う者同士の親近感も生まれる中で、喧嘩をしながらも絆を深めていく様は読んでいて『親友』の素晴らしさが伝わってくる。
この作品で意外であったのが真世の友人である切妻ことキリちゃんの存在。正直、これほど重要な役割を担う人物になるとは思わなかった。離れそうになった真世の澄多への想いを繋ぎ止めたのは間違いなくキリちゃんの言葉でした。真世は澄多だけでなく、キリちゃんとも親友になったんだなぁ…。