飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「双子と幼なじみの四人殺し」感想

双子と幼なじみの四人殺し (GA文庫)

双子と幼なじみの四人殺し (GA文庫)


あらすじを読んでミステリー要素の強い作品という印象を受けるが、これは登場人物たちの『人間関係』とその『歪な想い』を楽しむ本である。物語に引き込まれ、夢中になって読める作品に巡り会えた。

幼なじみである菱川迷悟と新山一縷・朽縷の双子はそれぞれ両親を失い、三人での同居生活をしている。
奇妙な共存生活をする三人は、ただの『幼なじみ』という関係以上のモノを感じさせ、ではそれが『恋人』かというとその関係は三人では成り立たず、しかし三人が想い合っているのは伝わってくる。この歪な関係の元での掛け合いを僕はドキドキしながら読んでいて、それが非常に楽しかった。

そんな三人が高校で目撃した生徒の自殺から物語が動き始める。目の前で起きた自殺にショックを受ける迷悟であったが、双子が「これは自殺ではない」という疑念を持ったことから、異常なほど強い迷悟の正義感が疼き、事件の渦中へと飛び込んでいく。迷悟と双子とは全く違う『幼なじみ』という関係を築いている…いや、雁字搦めになっている胡桃沢と清水。美少女である胡桃沢を『学園のアイドル』としてグッズを販売するこの二人が、更に胡桃沢の交際できるという権利まで売り出したことに、自殺した生徒が関わっていた。売春じみた行為とそれに振り回され決闘までさせられていた男たちがいたことを知り、暴走する怒りを抑えられない迷悟の描写がのちのち明かされる事実に繋がってくる。胡桃沢と清水の『幼なじみ』を中心に次第に広がっていく事件。最終的にその事件を片付ける『探偵役』を担う人物が意外で、そしてその人物の歪みきった想いに恐怖すらする。

最初はちょっとした行き違い。冷静になってみれば話し合いの余地はあった。
それが拗れに拗れきったのが迷悟と双子、胡桃沢と清水という二つの『幼なじみ』の関係。
一皮剥いた先で見えた暗い事実に目にして、そしてタイトルの本当の意味を知ったときに読者がどんな感情に襲われるのか。
それを味わうのがこの作品一番の醍醐味。