飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「女子高生店長のコンビニは楽しくない」感想

女子高生店長のコンビニは楽しくない (ガガガ文庫)

女子高生店長のコンビニは楽しくない (ガガガ文庫)


どうしてこんなバカな行動に出る男子高校生を主人公にして、ここまで気持ちの良い青春小説になるのだろうか。
不思議に感じたけど、面白い。正直なところ、デビュー作の『赤鬼はもう泣かない』と同じ作家とは思えないほど作品の完成度が上がっている。

転校するまでの最後の夏休みを、憧れのクラスメートの女の子と過ごすために、彼女が働くコンビニでアルバイトを始める。こう書くとまさに「青春小説!」といった感じではあるが、憧れの女の子である支倉こももが『店長』を務めるそのコンビニのアルバイトの募集要項『女性限定』をクリアするため、存在感の薄い主人公南里湊人が取った行動が『女装』とかなり残念なことに。人手不足もあって即採用された南里湊人改め『女子高生:戸浪りんな』は『男嫌い』だという噂のあるこももに女装がバレないよう四苦八苦しながらバイト生活を開始。ちょっと変わった同僚たちとお客さんに揉まれながら、女子高生店長こももの人の良さに触れ、彼女にますます惹かれる湊人の気持ちが伝わってくる。

最初こそ見える範囲の服装だけだった女装が下着をブラとパンティーに変え、化粧も始めたりと、どんどんエスカレートして様がコミカルに描かれていく。それが湊人の『青春劇』を崩してしまうほどのギャグにはならず、それどころか最後には女装を利用してこももの危機を救う方法になる流れは見事だった。『青春』と『コメディ』が上手く同居した結果、あの全てを無しにするあのあっけらかんとしたオチを生み出せるんだよな。最後まで読んで「良かった良かった」と思える小説は本当に気分が晴れやかになる。

しかし女装にハマっていく湊人…りんなちゃんを可愛いと思ってしまった自分はかなり残念だなあ(笑)