飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者2」感想

アウトブレイク・カンパニー~萌える侵略者2 (講談社ラノベ文庫)

アウトブレイク・カンパニー~萌える侵略者2 (講談社ラノベ文庫)


連続刊行ということで早くも2巻目。榊さん仕事しすぎです(笑)

今回は前回のテロ事件を受けて『自分の行為は異文化を侵略している』のではないかという想いに心を掴まれる慎一の姿を中心に描かれる。
そんな慎一の想いを置き去りに、陛下の肝煎りで始まった『日本のオタク文化を知るための学校』は好調な滑り出し。ロリ陛下ことペトラルカご執心の『オタク文化』を知れば彼女とお近づきになれるかもしれない、という期待もあり貴族や裕福な家柄の子供たちが大勢入学。そんな生徒に熱弁を振るう美野里先生の腐りようといったら。まず生徒に教える言葉が『総受け』ですか。もっと段階を踏んでから教えて上げてください。と、事業内容だけをみれば良い結果を生んでいるようなのだが、学校のクラスには人間を中心にエルフやドワーフといった異種族が混じり合い、エルダントでは当然の意識である『差別』で種族間の溝が浮き彫りに。オタク文化を…慎一をキッカケに仲を深めたミュセルとペトラルカの関係のように上手くはいかない。

前回から引き続き『異種族への差別』問題を抱えながら、次に起こるのがスパイ問題。慎一の寮を監視していたスパイを捕まえるも、そのスパイというのがケモノ娘のエルビア。ケモノミミにシッポの獣人という萌えポイントをしっかり抑えたエルビアを、オタク文化にどっぷり浸かった慎一が放っておける訳もなく、本来ならば処刑されてもおかしくないのに、彼の奔走によって何とか処分は免れる。が、ペトラルカを言いくるめる際にロリ陛下が嫉妬していたのは見過ごせないニヤニヤポイント。
ドジッ娘でスパイである意識に欠けるエルビアではあるが、こと絵に関しては異常なまでの集中力を発揮。美麗なイラストを仕上げる彼女は慎一お抱えの『絵師』になるのか。

一方学校の方ではオタク文化に対する理解が進んだ結果、慎一が恐れていた事態に。
エルフやドワーフが『萌え』について熱く論じ合ったり、吟遊詩人がライトノベルの内容を謳ったりとかなり笑える場面ではあるものの、日本から決まった量でしか供給されないオタク文化に飢餓感を覚え、中毒まで起こしている状況に発展。極端に娯楽の少ないエルダントでオタク文化という強力な毒が人の心を侵略し始める。更には慎一の上司である的場を始めとする日本政府はその毒を持ってエルダントを支配しようと画策していることが分かり、それを推し進めとする圧力とエルダントの間で慎一は板挟み。侵略者である自分に想い悩む慎一を支えてくれたのは、やはりミュセル。彼女の健気で純粋な心が日本のオタク男子の心を打たない訳がない。決意を固め、ペトラルカたちに『オタク文化をエルダントの商品』として扱うように勧めることで慎一は『日本政府の侵略者』を止める。その後に慎一へ送り込まれた刺客を見事撃退し、日本政府の目論見を暴いてみせて華麗にアドバンテージを握る慎一は、確かにミュセルとペトラルカが惚れ込み、ガリウスといった人物が一目置く男だ。

日本政府の敗因は萌える展開に熱くなったオタクをナメたことだぁっ!

日本政府を撤退させたことで『オタク文化の供給』が途絶えてしまうことになりそうだけど、今後の展開はどうなるのか。エルビアのような『萌え絵師』を中心にエルダントで創作して売り込んでいく、のかな。何にしても次の巻が非常に楽しみ。