飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

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「眠らない魔王とクロノのセカイ」感想

眠らない魔王とクロノのセカイ (GA文庫)

眠らない魔王とクロノのセカイ (GA文庫)


『月見月理解の探偵殺人』の明月千里さんが描く現代異能モノ。
前作とは随分趣を変えてきたな、と思ったが読んでみれば明月さんらしさが作品に現れている良い厨二病の物語でした(褒め言葉です)

『世界』(ワールド)と呼ばれる異能を操る『世界使い』(ルーラー)が存在する現代が舞台。
もっとも『世界使い』が多い土地柄である凪市に住む名家出の高校生神木凪夜も『世界使い』なのだが、そのことを隠して年季の入ったアパートに一人暮らしをしていた。女子にモテるものの、それに取り合わず他人を寄せ付けないクールな夜が謎の『世界使い』に襲われた時、彼を助けてくれたのが小さな『魔王』だった。吸血鬼の魔王を名乗る美少女クロノは、実は前日にちょっとした事故で殺してしまった夜を蘇生されたという衝撃的な経緯から、本格的に自分の『眷属』にしようと彼を吸血しようと目論む。クロノの眷属になるのを拒みつつも、『世界使い』によると思われる街で頻発する行方不明事件を追うために夜は彼女と一緒に行動を始める、というのがあらすじ。

まずは怒濤の勢いで繰り出される『世界』『世界使い』に関する設定の説明が序盤の内になされることなく進行するので戸惑ったのが正直なところ。けれども、ある地点でしっかりと設定と世界観の説明が成されたので、その後は何の問題もなく物語を楽しむことが出来る。この世界には『八つの並行世界』の魔王が存在し、その魔王とその眷属たちがやがて起きる『グランドクロス』という事象が発生した際に、この世界を乗っ取るために魔王たちによる戦争が勃発する。が、その『八つの並行世界』の内、吸血鬼の世界を統べるのがまだ魔王に成り立てで未熟なクロノ。尊大な態度を取り夜を『下僕』と呼ぶロリ魔王(17歳)ではあるも、未熟な魔王故に派閥の中では孤独を味わっていた。そのため夜に相手にしてもらえないと拗ねたり強がったりするのが可愛く、また悲しくも思う。過去の出来事から『世界使い』として『正義を成す』想いを封じ込めていた夜が、罠にかかったクロノを救うために取った行動と、彼の『世界』…「自分のルールを創り出す」能力は敵の裏をかいてくれて、読んでいて面白かった。正しい魔王を目指すクロノに吸血され、眷属となった二人の絆は深い。

今回は設定を魅せることと、魔王と下僕の関係を創る、まだ始まりの物語。作中登場した他の『世界使い』たちも活躍も今後読めると良いな。