飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「くずばこに箒星」感想

くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)


ページを捲る事に主人公の英知くんが魅力的なキャラクターに成長していく。

了星学園。もともと遊園地であった場所に建てた了星学園は、生徒を学業の成績や部活動への参加、普段の行いなどをポイントにして評価される特殊な学校である。ポイント順位によって生徒それぞれに椅子…チェアが与えられるこのグレードチェア制度は、序列が高いほど特殊なチェアに座ることができる。学園で二番目の序列、2ndチェアの福山英知は優等生という皮を被り、1stチェアの座を狙っていた。ある日、首席にして生徒会長でもある1stチェア神宮寺鳥子の命令によって、学園の落ち零ればかりが集まる『おそうじ部』に潜入調査をすることになる。その調査目的はおそうじ部が探しているらしい「何か」を突き止めること。そしてその「何か」とは姿を消した学園長ではないか。ポイントのため、また学園長と因縁のある英知はおそうじ部に入部。おそうじ部の部員になったことでトラブルばかりに巻き込まれ、英知の順位は瞬く間に落ちていく。が、学園の屑と呼ばれる彼等が固い絆で結ばれていることを知るにつれて、英知の心は次第におそうじ部の仲間に惹かれていくのだった。

成績ばかりを思い上を蹴散らして登り詰めようと冷めた心で周囲を睥睨していた英知が、おそうじ部の面々が自分が抱いていた劣る人間ではなく、温かい人たちであることを感じながら大きく変わっていく姿を楽しむ物語なんだと思う。おそうじ部の三人と一匹。彼等と一緒に行動することで雁字搦めになっていた英知の心が解き放たれていく。だからこそ、仲間たちがそれぞれ隠し事をしていてそれに気付き『怒る』ことができた。おそうじ部に入って英知が得たものを、おそうじ部にも真っ直ぐな心で返す。また小花に対する恋心めいたものも、英知の成長を促したのかな。前半と終盤ではもう完全に英知のキャラクターが違う。最後の生き生きと動く英知を見るために、この作品を読み切った。そんな気さえする読了感でした。