飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「覇道鋼鉄テッカイオー」感想

覇道鋼鉄テッカイオー (覇道鋼鉄テッカイオーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

覇道鋼鉄テッカイオー (覇道鋼鉄テッカイオーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)


カザンとルゥランの関係とその壮絶なる運命。そして宿敵グラトラムとのバトル。
面白かった。終盤、心をぐっと鷲掴みにされて泣きそうになるくらいに。

遠い未来の宇宙が舞台。様々な兵器が登場しては新たな兵器に成り代わられる中、人の生命エネルギー『オーガニックエフェクト』が力の最上位を占める時代。
オーガニックエフェクトを鍛錬によって操り超人的な力を振るう主人公カザン。『武侠』と呼ばれる者の中でも最も優れた力を見せることができる『童子神功』を体得したカザンではあるが、その力を得る変わりに『童貞』でいばければならない悲惨な運命を背負っていた。巨大な力を持ちながらも『童貞野郎〈ウィザード〉』と罵られる人生を歩むカザンは、相棒であり巨乳美少女であるルゥランと共に、シュネーヴェント星系の追われるお姫様アルフェミナを助けたことから物語が始まる。カザンとルゥランが身を寄せる、武力を持つ運送屋『ジャンパー運送』はアルフェミナの依頼を受けて、彼女を母星に連れ帰り従兄であるナシェスの陰謀を阻止することに。が、その過程でナシェスを手助けする犯罪組織『黒竜会』の妨害を受けてしまう。強敵であり、またルゥランと因縁のある宿敵グラトラムの力と彼の操る人型兵器・邪道鋼鉄『惨骸皇〈ザンガイオー〉』に敗れてアルフェミナを奪われたジャンパー運送は、かつての英雄が乗った覇道鋼鉄『鉄塊凰〈テッカイオー〉』の力を求めて動き出す。

主人公とヒロイン。カザンとルゥランの関係。
始めは童貞で居続けないといけないカザンを、ルゥランがからかったり誘惑したりとただ面白い掛け合いをするコンビだと思っていたが、読者と同じく何も知らないアルフェミナの視点から、二人の関係の真実を知ったときは息を呑んだ。過去の縛りを受けて本音でぶつかり合えない二人の姿に、胸が熱くなるのを感じる。互いをあんなに想い合っているのに。けれども更なる真実を晒されても揺るぎないルゥランへの愛を叫び敵に挑むカザンの勇姿に心を救われたよ。心の底から読者が望んでいた言葉を、カザンは言ってくれた。
またルゥランだけではなくカザンの運命をも狂わせた敵グラトラムは外道ではあるものの、彼なりの美学に乗っ取って行動し義を貫いている。こんな『敵』がいるんだな…。久しぶりに好きになれる『敵』だった。グラトラムとの戦いを通して成長するカザンのルゥランの二人も見事に書けている。それに比べてナシェスの下衆っぷりといったら、ある意味で賞賛に値する。

物語はひとつの因縁に決着をつけるところで終わっている。なので次回以降は元々カザンとルゥランが所属していた銀河武侠側…師との因縁に焦点を欲しいかな。