飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「対魔導学園35試験小隊 1.英雄召喚」感想

対魔導学園35試験小隊1.英雄召喚 (富士見ファンタジア文庫)

対魔導学園35試験小隊1.英雄召喚 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
魔力を持つ人間が滅びようとしている世界――武力の頂点の座は剣から魔法、そして銃へと移り変わっていた。
残存する魔力の脅威を取り締まる『異端審問官』の育成機関、通称『対魔導学園』に通う草薙タケルは、銃が全く使えず刀一本で戦う外れ者。
そしてそんなタケルが率いる第35試験小隊は、またの名を『雑魚小隊』と呼ぶ、劣等生たちの寄せ集めだった。
しかしある日、『魔女狩り』の資格を有する超エリートの拳銃使い・鳳桜花が入隊してくる。
隊長であるタケルは、桜花たちと魔導遺産回収の任務に赴くのだが――。
甦る『英雄』を地に還すのは少女の銃か、少年の剣か!? 学園アクションファンタジー!!

魔法よりも剣、剣よりも銃へと移り変わった世界。
魔導の力を取り締まるために組織された『異端審問官』を目指す『対魔導学園』で、主人公・草薙タケルは銃よりも格段に劣る剣を振るい『第35試験小隊』の隊長を務めている…のだが『雑魚小隊』という通称が示す通り、ノルマである任務も満足にこなせない劣等生ばかりの部隊。剣の腕はピカイチであるがそれ以外はからっきしの上に剣を馬鹿にされると冷静でいられなくなる隊長タケルを始め、あがり症の狙撃手・西園寺うさぎに、天才的な整備技術を持ちながら難のある性格故か作り出すモノも扱い辛い杉並斑鳩と、まともな人員が一切いない。そんな劣等生三人の部隊に入ってきた『元エリート異端審問官』であり銃の使い手である鳳桜花。魔女を忌み嫌い、任務中に殺害する暴挙に出ることから『紅蓮姫』とあだ名される桜花と雑魚小隊のメンバーの波長が合うはずもなく、独断専行の目立つ彼女との溝は開いていく展開。
今回は始まりの物語と言うことで、雑魚小隊の信頼…特にタケルと桜花が互いに認め合うまでを描きつつ、魔導を忌避する世界とそれにまつわる設定を無理なく読者に伝えている。雑魚小隊など歯牙にもかけず見下していた桜花と隊との仲を取り持ち、次第に桜花との距離を縮めていくタケルは何だかんだ貶されながらも実に隊長らしい人間であると思う。そして桜花というエリートが『強い女性』ではなくちょっとしたことで動揺して傷つく『女の子』であることが分かるにつれて好感度も上がっていく。タケルに与えられた力と、それに関わる人間の『非情さ』はこの作品の暗い面を見たようでドキリとする。剣術バカのタケルと桜花、そして雑魚小隊のコンビネーションが作り出す強力な力を次回も見たい。
しかしタケルの過去は、意味深な妹の件もあって非常に気になる。