飼い犬にかまれ続けて

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「天鏡のアルデラミン ねじ巻き精霊戦記」感想

天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)

天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)

〈あらすじ〉
隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている、一人の少年がいた。彼の名はイクタ。
戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。
戦乱渦巻く世界を、卓越した才で生き抜くイクタ。その波瀾万丈の半生を描く、壮大なファンタジー戦記、いよいよ開幕!

とんでもない物語の始まりに出逢ってしまった…そう、これはまだ物語の始まりに過ぎないのだ。
これほどキャラクターを魅せてくれる物語もそうありはしない。主人公・イクタ。戦争が嫌いな『昼行灯』のイタクが望む安穏とした生活は、しかし己が宿す圧倒的な軍事の才能によって絶たれることになる。
才能。絶体絶命の危機を乗り越えるイタクの胆力はベテランのペテン師ですら舌を巻く。見た目は覇気のない少年であり、全く頼りがいがなさそうに見えるのだが、怠ける時と本気を出す時のメリハリをしっかりつけて行動しているため、やる時はやる。それもとことん。飄々としながら部隊の指揮を取り、相手を手玉に取る様はもう清々しいほど見事。その過程が分かりやすい展開で流れるので頭に染み込むよう。上手い物語の転がし方だよ。イタクについては掴みどころ、と最初は思ったものの実は素直で熱い奴なんだなあ、と思い直すことになる。
そんな魅力的な主人公の脇を固めるキャラクターたち。ともに危機を乗り越えた仲間。どうしてもイタクが目立つ展開の中でしっかりとスポットが当たるそれぞれの盛り馬を作っているのが上手い。時折暴走してしまうイタクを押さえつけられる唯一の存在であるヤトリは、高い戦闘力で先陣を斬る。彼女がいなければイタクたちは何度死んでいたか分からない。またヤトリが死闘の中で見せたモノは今後語られていくのだろう。それとトルウェイ、マシュー、ハロの三人それぞれ成長あるいは仲間の成長を見て鼓舞されたりと大きな前進を予感させる。イタクとは違い、才能に限界がある彼等がどこまで戦えるのかを見守ることもこの作品の魅力か。
そして何より語らなくてはならないのは12歳の姫様シャミーユ。表紙のヤトリではなくシャミーユがヒロインだったとは。完全に騙されたぜ!
幼いながら国を想い、思考を巡らせる彼女。シャミーユがイサクに託した想いは、もう無茶ぶり以外の何物でもないが、これまでの展開を見ていると「イタクなら大丈夫だろ」「こいつなら何とかしてくれる」と思わせるモノがいつの間にか読者の胸の中に芽生えている。
これからこの物語はまたとんでもないことになっていく。その期待感に胸踊らせながら次の巻を待ちます。