「まだなのマイヒーロー!?」感想

まだなのマイヒーロー!? (集英社スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
千石寺洵は、かつての熱い正義の気持ちを失い、家にこもる毎日が続いていた。
彼に救われて千石寺家でメイドとして雇われたかなめは、その姿を黙って見ていることができるはずがなかった。
彼をなんとか立ち直らせるためにも、洵の妹であり天才科学者でもある千代に頼み「正義の味方計画」を発動させる。
しかし、計画は少し変更されて、かなめがヒーローをやることになり、さらには別の正義の味方も現れて、なぜだか闘うはめに。
正義と正義が、そして、恋がぶつかったその行方はどうなってしまうのか…。ヒーローラブコメアクション、始動!!

彼女たちの想いが、大好きなヒーローを呼び覚ます。
大企業の御曹司でありながら、挫折を味わったことで家に引き籠もるようになってしまった千石寺洵。そんな彼を想うのが二人のヒロイン。千石寺家メイドのかなめと幼馴染みの理保子は、正義に熱く燃えていた洵に救われたことで彼に惹かれた少女たちだ。ひきこもりになった今でも洵のことを想い、けれども何も出来ずに時間だけが過ぎてゆく。この状況を打破しようと動き出すのが、かなめであり、彼女に力を与えるのが洵の実妹である『天才科学者』の千代。彼女の発明したパワードスーツを着て、ヒーロー『トリプティ』となったかなめは、洵にかつての熱い想いを取り戻して貰うために街の人々を助け始める。そして理保子は、かなめの正義に洵の心が揺れた時に、彼の復活を後押しする役割を担う。全てはマイヒーローを救うために…ヒーローとなったヒロインたちそれぞれの戦いが健気で、とても力強い。
もう一人。洵を想いながらも素直になれないヒロインがいる。洵の中学時代のクラスメイトで、同じ塾に通っていた樹里もまた、彼の今を憂いながら日々を送っていた。が、『トリプティ』と洵の関係を知ったことにより、彼女の時間も動き出す。父の力を借りた…というよりも娘の性格を良く理解している東郷に上手く乗せられて、かなめと同じようにヒーロー『リトルスター』となった樹里は、主義主張の違いから『トリプティ』と対立する。洵への想いをキッカケに、ヒーローとなった二人のヒロインのすれ違いは、結果として洵を奮い立たせることに繋がる。『トリプティ』と『リトルスター』を同時に亡き者にしようとしたモノの悪意から、必死の思いで二人を救った洵の顔は、後ろばかりを見ていたひきこもりのそれではない。
洵の復活…舞い戻ったマイヒーローは、更なるヘタレ返上のために次も熱く戦ってくれるのか。三人の少女たちの想いも含めて、続きが気になる。