飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「覇道鋼鉄テッカイオー 2」感想

覇道鋼鉄テッカイオー 2 (覇道鋼鉄テッカイオーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

覇道鋼鉄テッカイオー 2 (覇道鋼鉄テッカイオーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
心身を極限まで鍛え、兵器をも超えた力を持つ存在・武侠。
童貞のみが極めることのできる『童子神功』を使うカザンは、幼馴染みの美少女・ルゥランや、とある星の姫・アルフェミナたちとともに旅を続けていた。
そんな一行の前に暗黒武侠『神算魔女』ミャウ=ガーが現れ、取引を持ちかける。
不可解な内容のそれを拒絶したカザンたちだったが、今度は自分と同じ名をした少女を捜すジルエッダという少女が訪ねてくる。
このジルエッダこそがミャウ=ガーの求めていた少女だったことから、カザンたちはミャウ=ガーとその義父にして暗黒武侠最凶の男、『巨凶暴星』ガーナラクと対立することになってしまう。
アルフェミナからの依頼にも拘わるジルエッダを追う中で、カザンたちはジルエッダたちにまつわる哀しい、あまりにも哀しい物語を知る…!!
第10回SD小説新人賞大賞受賞シリーズ第2弾!

一本筋の通った敵を描くのが本当に上手い。今回、カザンとルゥランの前に立ち塞がるのは『十絶悪鬼』のミャウ=ガーとその中でも最強の男であるガーナラク。義理の親子である二人の最凶の敵は、客観的に見ると知的でクールなミャウに冷たくあしらわれる強面の親父の図で、何だか和んでしまう。暗黒武侠でありながら、非道な行いに手を染めないミャウは、しかし心の底では過去不遇な時代に手を差し伸べてくれる『白馬の王子様』がいなかったことに嫉妬するひとりの女の子でもある。
そんなミャウと、童貞の王子様カザンといつも一緒にいるルゥランの反りが合うわけがなく、早速対立するヒロインたち。その状況を不思議そうにしているカザンの激鈍っぷりは相当なもの…まあ童貞だから仕方がないよね。
ミャウたちが追う少女ジルエッダの素性が、アルフェミナの依頼に深く関わることからジャンパー運送はその信念の元、彼女を助けることを決める。が、ミャウたちと敵対し話が見えてきたことでカザンたちはジルエッダと、その姉妹であるジルオットの悲しき運命を知ることになる。ジルエッダを見殺しにするか、ジルオットの心を犠牲にして二人を助けるか。悪は悪なりの考えでジルエッダとジルオットを救おうとするミャウ。それに対して答えることが出来ずにいた状況を打破してくれたには、アルフェルミナの心。誰も彼もを助けられるはずのない状況をひっくり返したことで、過去を引き摺るミャウがクールな仮面を捨てて感情的に行動しカザンたちに襲いかかるのが、実に人間らしくて良い。地の通った善人と悪人が操るテッカイオーとバンカイオーの戦いは、しかし真の悪人である『蛇蝎横行』の横槍を受ける。いや、今までの行いで分かってはいたが清々しいくらいのクズ野郎だな。読者をここまで怒らせることのできる敵キャラを作れるのも凄い。それだけに魅力的なキャラだ。カザンの、ルゥランの想いの力が『蛇蝎横行』の攻撃を阻止したが、バカ親父にけしかけられたミャウの想いは止められなかった。カザンはほんと男で、読んでる男でさえも惚れちまう童貞野郎だからな!
童貞童貞とギャグのように使われているも、ミャウが指摘するように、ルゥランの病が治り、二人が結ばれた後…果たしてカザンは無力な自分を…愛すべき女性を護る力を失っても凛としていられるのか。当然、否である。今は考えないようにしているが、いずれやってくるかもしれない時に恐怖するカザンの姿が痛々しい。童貞のまま、処女のまま、カザンとルゥランが愛し合う今の時間が、実は一番穏やかな時なのかもしれない。