飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ボイス坂 〜あたし、たぶん声優向いてない〜」感想

ボイス坂 〜あたし、たぶん声優向いてない〜 (ボイス坂シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

ボイス坂 〜あたし、たぶん声優向いてない〜 (ボイス坂シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
都内の女子高に通う藤林沙絵は、熱烈なアニメ・声優ファン。
「見て・語る」だけのつつましいオタクだった沙絵は、親友・千歌子にノセられて、コスプレやネットへの動画投稿に手を染める。
目覚めた承認欲求はやがて、憧れの対象だった「声優」という夢へ彼女を誘うのだった。
踏みこんだ未知の世界で、沙絵が見たものは一体何か!?
新たな出会い、挫折、引きこもり、オーディション、爆弾テロ、ツキノワグマ……。
予測不能な難関の数々が、夢見る乙女を叩きのめす!
目覚めよ、眠れる力! 這い登れ、夢の坂道!
『SD&GO!』で連載中の人気漫画を作者高遠るい自らが小説版を執筆!!!
驚異のひとりメディアミックスで贈る、声優青春ストーリー!!

声優になりたい。
その想いを胸に抱え、母親の反対を押し切り声優養成学校に飛び込んだ藤林沙絵。親友である千歌子の後押しもあって自信たっぷりの沙絵を待っていたのは『現実』という壁だった。親との約束でたった一年間で声優として芽吹かなければならない沙絵は、あっという間にその他大勢いる『声優の卵』の中に埋没してしまう。
挫折。
声優として羽ばたくことのできるのはほんの一握りの人間。それを痛感することになった沙絵はごろごろと転落していく。憧れだけでは夢は叶えられない。心を砕かれた沙絵が言い訳をしながら怠惰な日常に身を委ねているのは熱く突っ走っていた姿を知っているだけに、読んでいて辛いものがある。そしてこれが本当の現実ならば、このまま沙絵は夢を諦めて、実家に帰り堅実な人生を歩み始めるのかもしれない。しかしこれは物語なのだ。
無気力な日々を送っていても時間は過ぎる。その間、さまざまなことが沙絵の知らないところで起こる。努力し続けているライバルたちは成長する、親友たちはそれぞれの人生を謳歌している。自分だけが何もしていない。
何かを成す。今まで自分を優しく守っていた無駄なプライドを捨てて、恥も外聞もなく一発逆転を狙い声優オーディションに挑む沙絵は、応援したくなる熱い力強さを持っていた。オーディションの内容は沙絵が思い描いていいたものとはまるで違ったが、それでもこのチャンスを逃すわけにはいかない、と食らい付く沙絵の貪欲さは厳しい現実と戦うのに必要な武器だ。そしてその武器が審査員たちに届いたのか、待望の結果を得る。
孤独だった声優養成学校時代とは違い、仲間もできた。沙絵の人生逆転劇は始まったばかりである。