飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「アニソンの神様」感想

アニソンの神様 (このライトノベルがすごい! 文庫)

アニソンの神様 (このライトノベルがすごい! 文庫)

〈あらすじ〉
「はじめまして! エヴァ・ワグナーです。一緒にアニソンバンド、やりませんか?」
――アニソン好きが高じて、ドイツから日本へとやってきた少女、エヴァ。彼女の夢は、アニソンの聖地・日本でアニソンバンドを組むこと。
今、その夢が動きだす――。
第1回「このラノ」大賞作家が描く、音楽と青春。
『CHA-LA HEAD-CHA-LA』から『太陽曰く燃えよカオス』まで、すべてのアニソン好きに贈る、友情物語!

例えアニソンが分からなくても、心を熱く滾らせてくれる青春がこの中にはある。

遠いドイツの地から海を越えてやってきた交換留学生の金髪娘エヴァは、バンドを組み文化祭で演奏をしたいと目を輝かせて言う。
「アニメソング――日本のアニソンが、やりたいです!」
アニソン大好きなエヴァは有言実行するため、元気いっぱいバンドのメンバーを集め始める。

最初に目を付けた同級生の入谷は音楽家の両親の元に生まれ、確かな技術を持ちながら、音楽への情熱を失っていた。そんな入谷が奏でるギターに惹かれてエヴァはバンドに誘うのだが受け入れられるはずもない。アニソンを見下し、冷め切った視線をエヴァに向ける入谷。
しかしエヴァはくじけない。止まらない。入谷を絶対に仲間にする。

意気込むエヴァはまず他のバンドメンバーを捜し出す。都合良く楽器を弾けるアニソン好きなどいるはずもない…と思っていたら、いるんですよ。クラスのリーダー格である京子が、エヴァ歓迎会のカラオケで選曲したのはメジャーバンドの歌ばかりであるが、アニメ好きからすればバレバレ。どれもこれもアニメのタイアップ曲じゃないですか。
天使のような無邪気な顔で京子を脅して仲間に引き入れるエヴァは、実は悪魔なのではないかと思い始めるが、これも目標のため、仕方のないことなのだ。ドラム担当として半ば無理矢理仲間に入れられた京子であったが、エヴァと一緒にバンドメンバーの募集をかける。
それに引き寄せられたのが、キーボードを担当することになる引っ込み思案の琴音であった。なかなかエヴァに声をかけられず、ストーカーの疑いまでかけられた琴音は、ボーカロイドを使い作曲までする情熱を胸に秘めた女の子。琴音の編曲能力にもアニソンバンドは助けられることになる。
暗闇の中に輝く光のように、燻っていた者達が次々とエヴァのもとに集まってくる。お調子者で軟派な小松は、ベース片手に光に寄ってきた悪い虫のような気がするけどね(酷い)

最後のひとり。数だけ集めたバンドの歌に批判的だった入谷であったが、エヴァによって熱を入れられた心の動き無視し続けることはできず、ついに屈すのであった。
全てはエヴァの計画通り…いや、エヴァの純粋な想いが頑なだった人の心を動かした結果。同じ道を歩み始めれば、入谷はエヴァと似ていて真っ直ぐ向いて行く。ただエヴァと違って不器用なだけの話だったのだ。

これで五人揃った。
最初こそバラバラだった想いをエヴァがまとめ、アニソンに対する偏見に負けることなく文化祭のステージへ!
これまで実在するアニソンを使い続けてきたこの青春劇が、最後の舞台で歌う曲をひとつひとつ披露するたびに、鳥肌が立つ。頭の中でエヴァたち『レーゲン・ボーゲン』が歌うアニソンがくるくると巡り、思わず口ずさむ。
沸き立つライブ。そこにはもう偏見の目はない。ただただエヴァたちが奏でる音楽に酔いしれる観客がいて、大好きなことを全力でみんなにぶつける彼女たちがいる。

最初から最後まで、エヴァのパワーに魅せられる物語であった。
『アニソンの神様』をも魅了したエヴァの笑顔が、いつまでも心の中に居続ける、この心地の良い物語を頂けたことに感謝したい。