飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「雪の翼のフリージア」感想

雪の翼のフリージア (電撃文庫)

雪の翼のフリージア (電撃文庫)

〈あらすじ〉
ここは翼をもつ人々が住まう世界。
事故で翼を失った『飛翔士(ルーラー)』の少女・フリージアは、再び空を飛ぶために《義翼》職人・ガレットの元を訪れた。
ガレットは、あくまで代替品の《義翼》で過酷な飛行レースに臨もうとするフリージアに呆れるが、彼女との間に『ある因縁』があったことを知り、力を貸すようになる。
目標は飛翔士たちの最高峰『天覧飛翔会(グラン・ルーラ)』での優勝。
果たして少女の信念は空を制することができるのか──。

翼を広げ、人は天を舞う。

己の翼を信じて速さを競い合う『飛翔士』たち。
天才飛翔士と期待されていたフリージアは、飛翔士にとって夢の舞台である『天覧飛翔会』に出場するも、優勝を目前にして墜落。その際に片翼の一部を失うことになる。
飛翔士としての将来を閉ざされたフリージア。しかし夢を諦めようとはせず欠損した翼を補うため『義翼』職人であるガレットを頼る。最初はフリージアに自分の過去を重ね、冷たく当たっていたガレットであったが、彼女のレースに賭ける熱意、そして何よりも『天覧飛翔会』に優勝して、離れ離れになっている妹と一緒に暮らしたいという想いを受けて、最高の『義翼』を作り始める。その間、ガレットの助手として雇われたフリージアは無口ではあるものの人を思いやり行動する義翼職人の姿に惹かれ出す。

地面に這い蹲っても誇りだけは失わず、真っ直ぐ前を向いて夢を叶えようとするフリージアに突き動かされるのは、ガレットだけではない。現役時代、フリージアのライバルであったグロリア。傲慢な言動を繰り返すグロリアは、かつて師事していたガレットが信じるフリージアの今もまだ消えぬ夢への想いを何度も何度も知ることで、彼女と本気で向き合うことになる。
気高い誇りを胸に抱き、どんなことがあっても決して諦めない心を持って、新たな翼を広げたフリージアは空を駆ける。フリージアを認めたグロリアと舞う『天覧飛翔会』の結末が、優しいものであったことにホッと安堵の息を吐く。努力が報われて本当に良かった。あとはフリージアの純真な乙女心が、鈍いガレットに届くかどうかが気になるところである。