飼い犬にかまれ続けて

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「あそびの時間」感想

あそびの時間 暗黒遊戯昇天編 (ガガガ文庫)

あそびの時間 暗黒遊戯昇天編 (ガガガ文庫)

〈あらすじ〉
高校生活3年目。小鳥遊優征の夏休みはゲーセンバイトで始まった。
この店は、店員も客も変わり者ばかり。
店を裏で仕切るキミマロは、イケメンなのにディープなオタク。
男嫌いで、黙々とノートに妄想を綴る見雪夜子は隠れBL女子。
英語のできない金髪女性「傭兵」のドロシーに、懐ゲー好きの美人店長・春夏冬七海……。
そして嵐の夜。優征は全一プレイヤーの少女・ノラクロに出会った。初心者の優征はもちろん、常連たちをも手玉に取る彼女の目的は――?
虚実入り交じった、この空間こそが心地いい。これが俺たちの日常。

ゲームセンター。
ネットを介したゲームとは違い、生の人間同士の戦いと交流を味わえる場所。
この作品を読み終わると、ゲームセンターに行って思う存分遊びたいと思える。

進路を決めないといけない高校三年生の夏休み。主人公の小鳥遊優征が無理矢理引き込まれた場所がゲームセンターであった。
昔、ゲームセンターでこっぴどくやられた経験のある優征。苦い出来事もあり嫌って近寄らずにいた場所であったが、あれから五年の時が経ち、自分をゲームセンターに引き入れた美人コスプレ店長・春夏秋七海の笑顔を見守られながらやるゲームも悪くないな、と思い始める。

心境の変化。まさにそれが起きた瞬間、優征の目に飛び込んできたのは『アルバイト募集』の張り紙。それに飛び付いた優征は、ゲームセンター『ミドリ』という特殊な空間を共有するちょっと変わった人々との出逢いを増やしていき、次第に心休まる場所になっていく。

ゲームセンターの見方がすっかり変わったある日、優征は不思議なゲーマー少女と『再会』する。
彼女の名前はノラクロ。まだ13歳の中学生のノラクロは、『ミドリ』のゲーマーたちを挑発し、彼等全てを格闘ゲームで打ち破る。そんな凄腕のゲーマーであるノラクロに目を付けられたのが優征であった。かつて、優征がゲームセンターを訪れた際、唯一ボコボコにすることが出来た対戦相手がノラクロであり、その悔しさをバネに自分に最適化したゲームまで開発してその頂点の座についた天才少女。

そんな彼女に再戦を申し込まれた優征は、多少格闘ゲームに覚えのある程度のプレイヤー。それでもノラクロの挑戦状を受け取り戦う決意を固めるのは、これまでゲームセンターに関わるひとたちと触れ合ったきたことで「たかがゲーム」とは思わず、「あそびの時間」を真剣に楽しむことを覚えたからだろう。
その想いがノラクロに伝わり、戦いを終えた二人の距離はぐっと縮まる。ノラクロも加わって、より一層心地の良い空間となった『ミドリ』の輪。しかし穏やかな時間に身を委ねる優征とは違い、ノラクロは『天才少女』として行き詰まっている状況を打開するため、ネット上で噂になっている闇のゲームセンター『クラン・ピカロ』を目指し捜し出す。

すっかりノラクロの保護者になった優征は彼女を止めるが、簡単に言いくるめられて同行することに。『クラン・ピカロ』での戦いはゲームでありながらゲームではない、賭博絡みの試合。ゲームを遊びとは考えない大人の思惑が不純に入り混じる空間でも、最後までしっかり遊んで帰ることが出来たのは優征と『ミドリ』の仲間のおかげ。

せっかく遊んでいるのだがら最後には笑ってゲームセンターを後にしたい。この物語のラストには笑顔だけでなく、驚きが待っている。ノラクロがぶち上げた目標。それに巻き込まれ、優征が四苦八苦するのが目に浮かぶ。この年の差コンビはこれでバランスが取れていて、この先も楽しいあそびの時間が過ごせることだろう。