「ドリーミー・ドリーマー」感想
- 作者: 弥生志郎,基井あゆむ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2012/10/24
- メディア: 文庫
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〈あらすじ〉
主人公だって、いいことばかりじゃない――。
そう、ある日目覚めた僕は、いきなり主人公としてゲームの中にいたのだ。
そこはヒロインたちとお約束のイベントをこなしつつも、エンディングを迎えるとスタートに戻る、いわゆるギャルゲーの世界。
そんな僕の前に、転校生の少女・朝比奈桜さんが現れる。僕がループしてきたこれまでの日々にはいない存在だった朝比奈さん。
もしかすると彼女が、僕が元の世界に戻るための鍵なんだろうか……!?
「ちゃんと私のこと幸せにしてね。忘れたりしたら許さないんだから」「……忘れるもんか」
繰り返される日常の中で、少年は何を想い、誰とめぐり逢うのか――?
“せつなさのさらに先”に読者を導く学園青春ストーリー!
健全な男子ならば、ギャルゲーの主人公のような生活を送ってみたいものなんですよ。でもそれがエンドレスするゲームだとしたらどうだろうか?
柊木樹はギャルゲー『ドリーミー・ドリーマー』の主人公として、ゲームの中に閉じ込められていた。魅力的なヒロイン攻略しても、また一から同じ生活が繰り返される日々に心折れかけていた樹。しかし何十回と繰り返した生活と違う出来事が起こる。転校生の朝比奈桜は攻略対象ヒロインではなく、完全なイレギュラーな登場人物。樹はこのゲームから脱出する鍵を朝比奈が握っていると考え、彼女の攻略にかかる。
「ギャルゲー世界に入る」というライトな設定に思えるが、読んで行くと重い展開が待ち受けている。パンツが見てしまったり、着替えを覗いてしまったり。ギャルゲーお約束の展開と、樹の葛藤の落差が激しい。
ギャルゲー世界の中で得た恋心と友情は、決して嘘ではない。同じ日々が繰り返されても、同じように想い続ける訳ではなく、心は成長していく。虚構の想いを現実にするため、最後には顔を上げ、真実に向かって突き進む樹の姿が凛々しい。樹が求めていた人々がいて、ピースが合うように彼を受け入れてくれた救いが良かった。
終わってみれば予想外なほどに清々しい青春ストーリーだった。