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「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII 」感想

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)

〈あらすじ〉
より多くの実戦経験を積むため、北域へと遠征することになる帝国騎士イクタたち。
目指すは、カトヴァーナ帝国九百年の歴史において、一度も外敵の侵入を許したことのない大アラファトラ山脈に守られた軍事拠点、北域鎮台。
野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇な部署だと噂される、帝国最北の基地だった。
しかし、どこか訓練気分だった彼らを待ち受けていたものは、想像以上に過酷で壮絶な──そう、本物の戦場だった……。
話題の本格派ファンタジー戦記、待望の第2巻が登場!
巨大帝国の運命を握るイクタ准尉、その瞳に映るものは!?

気のせいかも知れないけど、前巻よりもイラストに気合いが入っているように見える。
これはイロイロと期待して良いんですかね…好きな作品なだけに素晴らしいイラストが見られるのは非常に嬉しい。

姫様の「衝撃の宣言」で終えた前回。帝国騎士たちは訓練に勤しみ、士官としてスクスクと成長を見せていた…ただひとり、イクタを除いて。
「これぞイクタだ!」と言えば、確かにそうなのだが、これといった大きな変化もなく新米軍人としての日々を送り続けるイクタに苛立ちを見せるシャミーユ。悠長に過ごしている場合ではない、というシャミーユであるが、実際活躍の場がなければ軍のトップに登り詰めるほど出世が出来るチャンスが生まれないのだから仕方がない。
そんな状態の帝国騎士たちが派遣されたのが、他国との戦争とはある意味で最も縁遠い北域の地。高い山々という天然の防壁を持つ北域鎮台は、しかしそこに住むシナーク族とのいざこざが絶えず、戦闘を繰り返していた。
シナーク族もまた帝国民。だが神に関する考え方の違いから相容れない形になり、自国民同士が戦い合う泥沼の状況。初めての「戦争」に翻弄される帝国騎士たちの姿を、固唾を呑んで見守る。

「……どうしたら、お前みたいに冷静でいられる……?」
マシューがイクタに恥を承知で問いかける。冷静に状況を見極め、合理的な判断を下すイクタの思考はあまりにもクリアに思える。
この問いへの答えは、マシューもまた冷静であることを説いているのと同時に、自分自身の危うさを訴えているのか。
イクタがいれば何とかしてくれる。ふとその考えが揺らぐ。冷静だったイクタが、戦争の汚い面を覗き見たときに爆発させた怒りは、彼の人間らしさを示し、不安定な面を現していたように見えた。
そしてそれは血の雨が降る戦いを強いられるヤトリにも言える。彼女の戦いぶりは、危険すぎる舞に思えて仕方がない。

全く合理的でない。あまりにくだらないことで人が死んでいく。それも自分が想いを繋いだ人たちが、だ。
このふざけた状況を作り出したのは誰か。その答えに行き当たったイクタは、歯噛みする。次の、次の、次を見越した合理的にもほどがある「攻撃」に。
逃げ道を塞がれていく…その前に、一発逆転の「何か」で危機を脱しないといけない。イクタは、ヤトリは…帝国騎士たちは、ついに現れた神の使者相手にどう抗うのか。
…まさか「つづく」で終わるとはねえ。生殺しですか、そうですか!