飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「黒鎖姫のフローリカ」感想

黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫)

黒鎖姫のフローリカ (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
"「私はあなたを繋ぐ鎖の主。この聖堂で亡者を束ねる黒鉄の鎖。喜ばせたければ――フローリカ、と名を呼びなさい」
不死の亡者――『落胤』に夜ごと脅かされる世界。
<荊冠の背教者>の護法神官であるスタッグは、『落胤』討伐の任務に赴き、その命を落とした……はずだった。
しかし、彼は不死の姫王フローリカの眷族として蘇らされる。
聖職者でありながら、不死者となったスタッグは彼女を殺すことを決意するも、不死の姫を殺し得る唯一の方法は――彼女を愛する事で!?
不死の呪縛に繋がれた時、少年は封緘聖堂に隠された世界の“真実”に辿り着く! アンデッド・ファンタジー、開幕!"

不死者のお姫様と、不死者になった神官。
フローリカとスタッグ。本来ならば敵同士の二人の運命が「繋がった」ことから始まる…これは血の舞う恋の物語だ。

護りたいヒト。
神官であるスタッグには、妹のように想う『聖女』ハルシエラがいる。彼女を護ると決めたあの日から努力を重ね、落ちこぼれの地位を返上して護法神官にまで昇り詰めた。
真面目にもほどがある男、それがスタッグ。
しかし彼は教会の敵・人類の敵である『落胤』から女の子を護るために命を落としてしまう。スタッグらしい最期であったが…彼は不死者として蘇生することになる。『落胤』のお姫様フローリカの手によって…。

護りたいヒトを護れず死ぬのは嫌だが、協会の敵である怪物として蘇るのはそれこそ死ぬほど嫌だ。信念を犯されたスタッグは、フローリカを殺そうと挑むものの歯が立たない。そして生きることに投げやりなフローリカを見て、ますます苛立ちを強める。
敵だから殺す。そう思っていた相手に抱いた苛立ちは、スタッグの中で大きな感情へと成長していく。それはフローリカだけにではなく、彼女を取り巻く眷属たちにも向けられる。
人と『落胤』。人もそうであるように、『落胤』にも様々な『落胤』が存在する。スタッグはそのことに気づき、不器用ながらフローリカたちと心の距離を近づけていく。あれだけ嫌っていた相手なのに…フローリカに芽生えた感情は、人と『落胤』の架け橋になるのか。瞳から生きる色を取り戻したフローリカは、これからどんな魅力を読者に見せるのかも含めて、続きに期待がかかる。