飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「水のマージナル」感想

水のマージナル (MF文庫J)

水のマージナル (MF文庫J)

〈あらすじ〉
水の感情らしきモノを読み取ることが出来る高校生・佳奈子。
人の体のほとんどが水から出来ているからか、気づけば佳奈子は人の感情までも読めるようになっていた。
小心者な性格から、その不思議な力を自分だけの秘密にしていた佳奈子だったが、夏休みを利用して祖母の生家、カナダはノヴァスコシアの田舎町へと一人行くことに。
潮騒の聞こえるその町の海岸で出会ったのは、佳奈子と同じ力を持つ青年・ヒヨリミだった。
感情の読めるヒヨリミには隠しごとが出来ない。そんな相手とひと夏の間、一緒に暮らすことになって……?
これは澄み切った水のように透明で、優しい物語。

確かに「優しい物語」でした。和むわ〜。犬洞あんさんのイラストもあってか、本からマイナスイオンが出てるのかと思うほど癒された。

他人の感情が読める箱入りお嬢様の佳奈子が、ひと夏を過ごすため単身で母親の故郷であるカナダの田舎町にやってきた。そこで出会ったのは同じ力を持った青年ケイ。男性が苦手な佳奈子は初めケイのことを警戒していたが、次第に彼のことが気になり始める。

舞台はカナダの田舎町。
そこで佳奈子は初めての恋心に揺れ動く。
一人称視点が佳奈子のため、彼女の心がケイにどれだけ振り回されているか良く分かる。天然お嬢様全開の佳奈子の所作はとても可愛らしいのだが、そのせいで高校生には見られないのも納得してしまう。恋した相手であるケイがクールな分、余計に佳奈子が幼く見える。

物語全体を通して佳奈子の初恋が描かれていくが、水に関わる特殊な力を巡り事件も起こる。とはいっても起伏のある物語展開ではないため、ラブコメを期待している人はがっかりしてしまうかも。あくまでも佳奈子の視点を通して見るほんわかした恋模様とカナダの田舎町を楽しむのがメイン。いろいろな意味で良い性格している佳奈子の妹・佐奈の登場はもっと早くても良かったかな。場を掻き乱して欲しかった。

「優しい物語」だったけれど、途中で次巻続く展開になってしまったのが優しくないところかな。一冊で締めてくれたら良い物語だった。