飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「超粒子実験都市のフラウ Code‐1#百万の結晶少女」感想

超粒子実験都市のフラウ    Code‐1#百万の結晶少女 (角川スニーカー文庫)

〈あらすじ〉
謎の素粒子【グロア】が発見され、科学は飛躍的に発展する可能性を得た。
グロアの生活レベルでの実証をするために作られた実験都市は、世界中から人が集まり、人口100万人を超える巨大都市に成長する。
一方で、実験都市では、子供たちが異能を持って生まれるようになった。
それから十数年――
ある日、高校生の隼人は、フラウと名乗る少女と出会う。
なんと彼女は悪名高い研究機関"ビショップ"に追われており、思わず庇ってしまった隼人は一緒に逃げ回るはめになる。ところが彼女はなぜか子供のように無垢で、一般常識すら持たず、
「フラウは人間(ヒユーマン)に幸福をもたらす為に生まれてきたのです」と言うばかりで――!?

Q「悪い奴に追われた可愛い女の子が空から降ってきたらどうする?」
A「抱き留めて助けるでしょ!全力で!」

当然のことを聞くんじゃありません!
…いや、「可愛い」女の子だから助ける訳じゃないんですよ。ええ本当に。

不思議な力を秘めた『グロア』と呼ばれる粒子を満たした実験都市グロアポリスを舞台に、実験施設から逃げ出してきた少女を守り抜くため、主人公の隼人が異能を振るって戦いを繰り広げる。

この物語を語る上で何よりも魅力的なのは、隼人が守護する少女フラウ。彼女は人間ではない。ロボット…というよりもアンドロイドといった方が近いのか。身体の大部分をグロアで構成している特殊な存在であるフラウは、これまで何の経験もなく実験施設で生きてきたため、姿は高校生くらいなのに、中身は純真無垢なお子様。何も知らないフラウは、広い世界に立って、隼人という少年に出逢い、様々な経験を通して『幸せ』という概念を手繰り寄せようとする。

人間にとって当然の感情を知らないフラウに驚きの連続。しかも当のフラウは読んでいる限り、本人の言動とは違って非常に感情豊かな存在であるように見えるのだから、実際に触れ合っている隼人の戸惑いは相当なものだろう。更にその輪の中に、隼人の幼馴染であり、異能使いでもあるかなめと、未知で溢れているフラウに興味心身のアイドル双子も加わって随分と賑やかな状況に。特に隼人とフラウが一緒に居続ける状況に不満のあるかなめであるが、フラウの性格を知ってしまうと一生懸命になって彼女を助けようと行動するところが、もうひとりのヒロインとしてポイントが高い。

グロアに満ちた実験都市に限り、人は異能…PSY能力を使うことができる。隼人もかなめも、そして追って側もこのPSY能力を活かして戦うところが見せ場。またPSY能力とグロアとフラウの関係が事件をより大きなものへと拡大させていき、この関係性が、今後の物語展開の鍵になっていくのだろう。

幸せというモノがいったい何か?
それを知ってしまったフラウは、もう何の刺激もないこれまでの生活には戻れない。その責任は誰にあるのか…経験を望んだフラウ本人は勿論、彼女を連れ回した隼人にも、彼女のこれからを背負う義務があるのではないだろうか。
その重みから一度は背を向けて、でも逃げ出すことなく戻ってきて、フラウを救おうと全力で押し通ろうとする隼人の男気には惚れ惚れしてしまう。
一旦の解決をみた今回の事件。隼人とフラウは共に居続けることが叶ったが、しかし手放しで喜ぶにはあまりにも情報が少なすぎる。今後二人と彼等を取り巻く人々はどんな事件に巻き込まれて行くのか。次回を期待して待ちたいですね!!