飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「失恋探偵ももせ」感想

失恋探偵ももせ (電撃文庫)

〈あらすじ〉
「恋はいつか終わります――」
そんなことを言う後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女に手を貸す日々を送っていた。
――失恋探偵。
それはミステリ研究会の部室を根城にして行われる、学校非公認の探偵活動。恋に破れた人のために失恋の真実を調べる彼らのもとには、それぞれに失恋の悩みを抱えた依頼人(クライアント)たちが訪れて――。
第19回電撃小説大賞〈電撃文MAGAZINE賞〉受賞作の、叶わぬ恋の謎を紐解く学園青春"失恋"ミステリ、ついに刊行!

電撃文庫小説大賞作品は安心して読める。
そう思う手堅さと面白さを実感させてくれるよ。この作品も派手な盛り場こそないけれど、しっかりと物語を読ませる力がある。

『失恋探偵』
考え出すと不思議な言葉だ。失恋?探偵?この二つの言葉がなかなか繋がらない。そのせいか、物語序盤は「いったいこのお話は何処に向かって行くのだろう?」という不安感が生まれるが、それも一瞬のこと。なるほど、失恋探偵の百瀬とその先輩・九十九のコンビは依頼者の「恋の終わり」を手助けする。何処か噛み合わないまま恋を終えようとする少年少女たちの歯車をカチリと合わせる役を、百瀬と九十九は担っているのだ。

凶悪な事件が起きる訳ではない。日常の中で生まれる人の恋。百瀬が感情を表に出すタイプではないため、失恋探偵の情報収集の過程には当然恋が付き物で、不思議な感覚を読者に与える。
様々な「恋の終わり」を通して百瀬と九十九は恋に対する考え方の行き違いから、対立するようになる。失恋探偵を名乗りながら、一番恋に疎いのが自分たちであるというのが何とも…(笑)
最初は可愛げがない、と思っていた百瀬に、九十九同様、最後には愛おしい彼女に恋をしていることだろう。