飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「天翔虎の軍師」感想

天翔虎の軍師 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
帝国暦36年。トーレ帝国は最後まで抵抗を貫いたフレリカ王国を滅ぼし、大陸制覇を成し遂げた。
祖国滅亡の瞬間を瞼に焼き付けたフレリカ軍大将軍の息子シエルは、心に誓った。
――『フレリカ王国を救う、軍師になる!』と。
それから2年。帝国の大軍師ディオラに師事しつつも仲間たちとともに反逆の秘策を練っていたシエルが、ついに表舞台に立つ! 
祖国の奪還と、そして幼き日に「ずっと守る」と約束したひとりの少女を救うために……。
勇将たちが「武」を競い、軍師たちが「智」をぶつけ、王たちが「覇」を争う、本格ファンタジー戦記が開演!!

戦記ファンタジー増えてきましたねー。ひとつのレーベルにひとつはシリーズがあるくらいには。何かの偶然なのかどうなのか。戦記ファンタジーというジャンルでも、生き残りを賭けた戦いが始まっているようです。

愛しい人のため、そして祖国のため。国を滅ぼした帝国に入り込み天才軍師となった主人公シエルは、囚われの身となっている王女ミオ・フレリカを救出する機会を、幼馴染のエナとフレイと伺っていた。天下統一を果たした途端、狂王と化した皇帝の魔の手から、幼き日を共に過ごしたミオを救い出したい。仲間を募り動き出したシエルであったが、同期の軍師であり、また同じように『天才』とうたわれるユミカの知略によって、その行く手を妨げられることになる。

戦記ファンタジー、と聞くと主人公は序盤「役立たず」だったり「落ちこぼれ」だったりと評価の低いところから登り詰めてくる印象が強いのだけれど、この作品はタイトルにもなっている通り、『天翔虎』と呼ばれるほどの肩書きからスタートする。周囲から期待される立場から物語が始まるところが、何だかとても新鮮だった。しかし主人公シエルは、自分の想いを果たすために、周囲の期待を裏切って…王女ミオを救出、逃亡戦へと至ることになる。
この転がるような展開の速さは魅力だ、と僕は思う。事態が面白いほど進むのでストレスを感じずに読み進められる。

シエルには心強い仲間がいるが、それでも巨大な帝国に対抗するにはまだまだ。皇帝の強引な支配によって燻る火種を上手く味方に引き込みながら急成長する新フレリカ軍。そんなフレリカ軍を率いるシエルは、勝利を手繰り寄せるため、己の身を呈して作戦を実行するのだから、人を惹きつける。間接的にではあるが、ユリカとの知略戦に勝つことが出来たのは、その行動力ゆえ。旧フレリカの土地を取り返し、勢いを増すフレリカ軍の行く手を、困難が待ち受けているのだろうが、最後まで書き切って欲しいな、とも思います。割と切実に。