飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「偽悪の王 Blade, Blaze and Sweet Ballade」感想

偽悪の王 Blade, Blaze and Sweet Ballade (MF文庫J)

〈あらすじ〉
異形都市ダイロン。古より伝わる魔法と、最新の科学技術とが融合した都である。
由緒正しきグライムス魔法学院には若き才能が魔力・知力の厳しい選抜をくぐり抜け入学してくるが、レインは学院で一人、魔力を持たないただの人間だった。しかし――
「あなたに決闘を申しこむわ!」
魔銃剣を突きつけた転入生リリアはレインに次ぐ、LEVEL0の破天荒な少女だった。最恐の生徒会長イヴを倒し伝説の魔導具を手に入れたいリリアと、イヴを守るレインが出会い、全ての歯車は廻り始める――絶対的マギ・ファンタジア、開幕!

正直いうと前二作がどうにも肌に合わなかったため、この作品は回避する予定でした。実際、新刊発売と同時に買わなかったのですが…「三作品読まないとその作家の評価は出来ない」という自分の考えもまたあったこともあり、遅れて購入しました。

二階堂さんを見直した。これがこの『偽悪の王』を読んだ後の素直な感想。それと同時に、丁寧に書き込んでいった物語前半の良さと、後半の急ぎ足になっている展開にはちょっと残念な想いもある。
それでも物語を読ませる力を感じられたことで、このままこの作家さんの作品を読むのをやめようと思っていた僕の心を押し留めることができた。

まずは世界観。魔法と科学が融合した都市にある魔法学院を舞台に、魔法の才能ゼロにも関わらず座学の成績だけで入学を果たした主人公レインと、そんなレインとは真逆…実技の成績だけで入試を突破、転入してきた訳ありヒロイン・リリアの奇妙な学園生活を描く。ある意味『問題児』の二人は目立ち、他の生徒…作中の造語で『聖徒』たちに距離を置かれている。
そんなレインとリリアを超える問題児なのが、聖徒会長であるイブリン。圧倒的な戦闘力を持ち、全ての聖徒の頂点に君臨する暴君は…聖徒会書紀のレインがいないと食事も出来ない生活破綻者でもある。

聖徒会長と書紀の不思議な関係。また聖徒会長を任期まで勤めると「どんな願いでもひとだけ叶えてくれる」魔導具を使うことが許される。その権利を巡り、聖徒会長の座を争う。そしてその権利を欲するリリアは、直球でイブリンに挑み、あっさりと敗れる。直球とはいったが、このある種の「お間抜け」具合がリリアの魅力…と、言えるといいな。真っ直ぐな心のリリアと飄々として無欲に見えるレインは、相入れない…リリアが一方的に嫌いそうではあるが、レインの学園生活の裏側になる彼の本質が明らかになるにつれて、その距離が縮まっていく。

聖徒会長…魔導具の生む力を求める者たちの策略によって、次第に不利な状況に追い込まれる聖徒会メンバー。しかしレインとイブリンの抱える闇…混沌は、容易にその状況を飲み干してしまう。
闇があるならば、光もなくてはならない。その役割を与えられたリリアの活躍もまた見て欲しい。終わり方もシリーズ展開する上で期待を持たせる形になっていた。
レイン、リリア、イブリンの関係をもっと読んでいたい。