飼い犬にかまれ続けて

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「16:00の召喚魔法 1」感想

16:00の召喚魔法 1 (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
軽度の中二病を患う高校生ヒロキのスマホに、ある日見知らぬメールが届く。──お願いです!わたしたちを助けてください。それは、まるで冗談のような異世界からの召喚魔法。ヒロキを召喚したのは『魔力を持たない』天才魔法使い、アリサだった。
「ヒロキさんのこと、触れて、味わって、感じて、もっと知りたいです!」
異世界を覆う災厄ヴィクティマと戦う救世主となったヒロキと、その首筋をカプカプ噛み、頬をぺろぺろ舐め、五感をフル活用してヒロキを「研究」し尽くすアリサの、カラダ密着型ファンタジー開幕!

『異世界召喚モノ』に大切なのは「自分の世界ではない別の世界のために戦う意味/理由」を丁寧に描き出すことだと思っている。仮に自分が異世界に召喚されたとして、訳の分からない世界のために命を賭けて戦うかな?自分の世界が危機に陥っていても戦えるもんじゃないよ。

この作品の主人公・ヒロキはどうだったかというと、日常に退屈していて、何事にも本気を出せず、ただやってくる日々を繰り返す学園生活を送っている。これで実際、能力がなければ、ある種「何処にでもいる高校生」になりそうなものだが、ヒロキは「やればできる奴」という評価を周囲からされる少年。しかも通い妻のような幼馴染サイカまでいて「いやいや日常に退屈している場合じゃないだろ!」と思わずツッコミを入れたくなる。

そんなヒロキを別の世界に引っ張り込むのは、異世界の天才魔法使い…勿論、美少女も付くよ!、のアリサだった。魔塵ヴィクティマによって蹂躙されている異世界を救うことが出来るのは、ヒロキだけ。魔力が枯渇している異世界において、膨大な魔力を持つヒロキは、『発電所』のような扱われ方をされ、アリサを介して強力な魔法を放ち、討伐することが困難なヴィクティマを葬ることに成功する。

元いた世界で感じていた『退屈』という名の違和感、そして容易に敵を討伐出来たことから、異世界を救うことを決めるヒロキ。正直なところ、この流れがあまりにも軽すぎるため、読んでいるこちら側が今度違和感を持ち始めてしまうのはいけない。
自分の世界と異世界を交互に行き来しながら、次第に異世界に生きる意味を見出し始めるヒロキに浴びせかけられる絶望と失望の視線。容易に受け入れた状況を、容易に手放してしまうヒロキを、無責任であると、果たして責めることは出来るのだろうか。それでもアリサや異世界で出会った人のため、再び異世界に行く決意と、戦う意味、そして自分の世界が…サイカのいる穏やかな日常がどれほど大切なものであるかを実感していく。

と、この作品。シリーズ想定のため、まだまだ明らかになっていないことがあり、1巻の流れがあっさりとし過ぎているため、いろいろ設定周りを有効に使い切れていない感じがするのがちょっと残念なところ。ヴィクティマだけでなく、人もまた敵である展開は正直燃えるので、次回以降はもっとボリュームがあってもいいかなあ。