飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者6」感想

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者6 (講談社ラノベ文庫)

〈あらすじ〉
謎の『穴』で日本とつながってしまったファンタジー世界の『神聖エルダント帝国』。
そこにオタク文化を浸透させようと創設された交易会社<アミュテック>に新たな
メンバー・ヒカルが加わる。ヒカルは総支配人・加納慎一の補佐という立場だが、
容姿端麗、コミュニケーション能力ばつぐんで、あっと言う間に宮廷でも学校でも人気者になってしまう。ヒカルの手によって、エルダントのオタク化はさらに加熱するが、同時に負の側面までもが出てきてしまう。時を同じくしてエルダントでも事件が発生し、慎一は
またもや危機の中に。そこで慎一が取る最後の手段とは!?

ふっ!表紙を見ただけで新キャラ・光流の正体を見破ってしまった。そしてそんな自分に軽く絶望した。辛い。
「ラノベで可愛すぎるヒロインが登場したらまず性別を疑え!」僕はこれを実践しただけなんだよ!

と、いうことで慎一の補佐役として日本政府から送り込まれたのは、コスプレ厨ニ病美少女…ではなく、女装した美少年の光流くん。榊御大も最近の時風に乗って、一家に一台じゃなくて、一作品に一人『男の娘(女装男子)』を投入してきました。
この光流くん。オタク心理を巧みにつき、エルダントの住民と一気に仲良くなると、早速『二次元産業』で商売を始める有能さを披露。これが日本政府が慎一に求めていた姿勢…そしてそれをしなかった慎一の変わり。

同じ業務を与えられて、違う成果を挙げたとするのならば、企業として残すのは利益を挙げた人間であろう。エルダントで過ごしてきた日常を侵略されているようで、気が気でない慎一の心情は、自分たちの日常にも当てはめることが出来て辛い。利益追求に走り、人の心など二の次三の次だという光流の行動を止められず、切り返す答えも見えず悩む慎一の心を解き放ってくれたのは、やはりこの女性ミュセル。彼女の一途な想いが、慎一らしい行動を起こさせる。

利益追求をするのは良い。しかし売ったからそれで終わりという訳にはいかないのが大人の世界。必ず責任が生まれる。慎一のオタク布教活動には愛があり、無意識ではあるがその向かう先を見ようともしている。利益追求と責任のバランスを著しく欠いた光流も最初は我関せずであったが、彼もまた人間だ。対話して、見聞きすれば、感情も揺れ動く。そこに人として成長する可能性がある、と光流の行動にはこれからを期待させるものがある。

物語上、ライバルに位置付けているけど、二人が議論しあって作り出すものはエルダントにとっても素晴らしいものになりそうだ。