飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「赤村崎葵子の分析はデタラメ」感想

赤村崎葵子の分析はデタラメ (電撃文庫)

〈あらすじ〉
分析部――それは部長たる赤村崎葵子があらゆる事象を(勝手に)分析し、余人には想像も付かない驚きの(偏見含む)道筋によって(たいていはどーでもいい)結論を導く部活である。
そう、彼女にかかれば結論はいつも藪の中。無駄にこんがらがった分析の先にかの美少女が導く驚愕と脱力の結論を、キミは把握できるか!? ひらめきと口から出任せとほんのちょっとのサービスででっちあげちゃう新感覚「分析」系ストーリー!

読み終わってまず思ったのは「面白いんだけど、はてどうやって感想を書こう?」ということ。
探偵モノとはちょっと違う。分析部のかなーり変わった美少女が、起きた事件を解決するために『分析』を始めるのだが、その筋立てがあまりにも無茶苦茶。また短編形式であり、章ごとにそれぞれの事件が起こり無理矢理解決に導く展開になっているため、読者は読者で「この物語の着地点は何処なのだろうか…?」と思ってしまう辺りが感想を書きにくくしてるのかな。あっと、あくまでも個人的な感想です。

分析部の部長・赤村崎葵子。通称:テル…何処をどう略すと『テル』になるのか疑問で仕方が無いが、しかしそう名乗るのだから納得するしかない。無理矢理な分析を繰り返すテルの相棒ともいえる主人公の賀茂は、のほほんとした性格の至って普通の高校生。けれども常識を知らないテルの分析行動に振り回され、更にはテルに匹敵するアホなキャラクターたちに囲まれていることもあって、ツッコミ術は他の追随を許さないほどのキレの良さ。テルの介入によって混沌とする状況に対してただひとりツッコミを入れられる逸材。僕なら何も言えないよ。

いつもデタラメな分析ばかりしているテルではあるが、チャットルームの世界では、卓越した分析力を披露して、事の本質を賀茂に見せる。「巫山戯たことばかり言っているが、本当は凄い奴」そんな認識を、読者が持ち出す。
しかし物語後半に明らかになる真実が、テルという人間を映し出す。僅かな勘違いが引き起こしたズレ。勝手な思い込みではあるが、その思い込みがテルの評価を逆転させる。

テルと賀茂の関係。この辺りから物語の着地点が見え始めてくる。テルという人間に別の価値を見出していた賀茂は、本当のことを知った後でも、彼女の隣にいたいと思えるか…答えはイエスだ。テルと一緒にいた時間は、勘違いでも嘘でもない、心を通い合わせる時間だった。というところでハッピーな幕引きになるのだが、いや流石に方向性を示すのが遅すぎたかな。面白かっただけに、そこだけ惜しかった。上手く書いて欲しかったかな、と思う。