飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。6」感想

勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。6 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
勇者試験直前に魔王が倒されてしまい、勇者になれなかった少年ラウル、父親である魔王が倒されて居場所が無くなった魔王の娘フィノ、ラウルの勇者予備校時代のライバル・アイリの三人は、王都にあるマジックショップで一緒に働いていた。
ある日、巷で流行している魔物インフルエンザにセアラ店長とバイザー副店長が倒れてしまう。
急遽店長代行を務めることになり張り切るラウルだが、クレームや問い合わせの嵐にてんてこ舞い。
さらに、店長のお得意さんだというやっかいなお客様も現れて……?
勇者と魔王の卵が織りなす、ハイテンション労働コメディ!!

アニメ化決定おめでとうございます!!
ヌルヌル元気に動くフィノたんに期待ですな。店長に早く癒されたい…!

さぁて今回の『勇しぶ』はっ?
はじめてのてんちょう(代理)
現実逃避も兼ねてファンタジー小説を読んでいたはずなのに、何故か現実の自分の仕事振りを強く思い起こさせる内容だった。何を言っているか分からねえと思うが、俺にも分からねえ(以下略)

はい。口から魂が抜け出しそうな、社会人たる僕には身につまされる内容。
店長・副店長不在の中で、店長代理となったラウルが、初めて社会人としての『責任』と直面することになる。

「想像力の欠如」
ラウルになく、フィノに備わっていたもの。自分だけの「仕事の都合」だけを考えるのではなく「相手(お客様)の視点」も同時に考えなければならない。忙殺されて、想像力を失ってしまったラウルに、自覚なしで…だからこそ美しいのだが…フィノは、相手に対する思いやりを持つ大切さを伝えてくれた。苛立つラウルに失望することなく、向き合い続けたフィノは、本当に太陽のように輝く女の子だ。

責任感があるから悩む。成長したいと願うから悩む。単なる目の前にある作業として仕事をしている人間は、責任など一切感じていないし、自分の都合の範囲内でしか悩まない。想像力なんて働かせない。ラウルは違う。それは店長がいて、仲間がいて、大切なフィノがいて、何よりも自分自身の、勇者を目指した気高い精神があるから…ラウルは成長していく。

ひとりの責任ある男として、成長したラウル。最初こそ嫌われていた…嫌われて当然だったお姫様ユニィとも懇意になり、何やらアイテムショップの一店員では収まらなくなってきたような。勇者にはなれなかったけど、別の、同じくらい気高い何かに到達するような、そんな予感を残す。