飼い犬にかまれ続けて

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「さまよう神姫の剣使徒」感想

さまよう神姫の剣使徒 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
一つの都市と一つの迷宮を残し、虚無に喰われ果てた世界。
戦いの先の栄光、冒険の果ての一攫千金、あるいは死。人々の糧と欲望、そして宿命と奇跡――あらゆるものが眠る大迷宮《大いなる門》で、探索士・ユウキは一人の少女を拾う。
「ここがソリトゥス、我が街か! 神姫の帰還をたたえよ!」
街を守護する女神――神姫であると自称する拾われた少女・ティナは
失った力を取り戻すため、ユウキに協力を求める。
「対価は持っていない。だから、私自身を買ってくれ!」
宿命から目を背けた探索士と、奇跡の力を取り戻すため奮闘する女神が織りなす
“世界を護る”剣戟の迷宮ファンタジー!

HJ文庫大賞(ノベルジャパン大賞)出身者が同時受賞を抜かして外のレーベルで書くのはこれで二人目になるのかな。何にしても、期待している作家さんの活躍の場が広がるのは読者としては良いことです。

たったひとつの都市を残して、世界は黒い霧にも似た何かに食い尽くされていた。『大喰らい』と呼ばれるそれから都市を護るのは五柱の神姫たち。神姫たちは互いに協調し合い、人々を、都市ソリトゥスを、護り続けていると言われている。そしてソリトゥスの下に広がっているのは巨大な迷宮。その終わりに世界を救う何かがあるとされる迷宮『大いなる門』には、多くの探索士が一攫千金を狙って潜り込んでいる。落ちこぼれの探索士ユウキは、『大いなる門』の中でひとりの少女を助け出す。彼女の名前はティナ。「六人目の神姫」を名乗る彼女との出会いをキッカケに、ユウキは神姫を巡る「真の戦い」に引き込まれて行く。

あらすじを読んでしまうと分かってしまう事実であるが、100ページまで読み進めないと知ることのできない絶望的な世界観。だというのに、ソリトゥスで生きる人々は何事もなく日常を過ごしている。それというにも、五人の神姫に護られている安心感と信頼があるからだろう。

しかし現実は違う。
神姫たちは水面下で争い、お抱えの探索士の集団『誓約団』を競わせ、迷宮を攻略しようと戦っている。
そんな中で突如現れた「六人目の神姫」…しかも記憶を失っているティナが、どれほど危険な状態であるか、分かることだろう。厄介な存在を拾ってしまったものの、責任だけは果たそうとするユウキは、しかし煮え切らない姿勢を崩さない。底辺探索士あるいは倒産寸前の商人といった「落ちこぼれ」さを隠そうともしないユウキの言動に、正直ティナ以上に読者はイライラさせられる。仲間が傷付いていく最中でも、昼行灯を貫こうとするユウキを見損ない兼ねたが、最後の最後には、ティナのため、仲間のため、立ち上がって「落ちこぼれ」のレッテルを引き剥がし、見返す流れは最高に気分が良いが、出来ればもう少し早くこの展開が欲しかったかな。我慢し過ぎた。

なかなか熱くならないユウキの尻引っ叩いて引っ叩いて、ようやく動かしたのはどうまでも真っ直ぐ生きるティナの輝きは、確かに護りたいと思わせる力がある。基本アホの子だが、物事の真理をしっかり見通している。紛れもなく「神姫」としての力を持つティナが、今後ユウキと共に「神姫たちとの戦争」を駆け、生き抜くことが出来るのか。ラストを見るに、神姫とその守護者『剣使徒』には様々な関係があるようだ。他の神姫たちの登場、楽しみだなあ。