飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「温泉ドラゴン王国 1 ユの国よいとこ、一度はおいで」感想

温泉ドラゴン王国 1 ~ユの国よいとこ、一度はおいで~ (オーバーラップ文庫)

〈あらすじ〉
「私に、温泉を調べさせてくださいっ!」山ばかりの貧乏国家「ユ国」の王子アリマは国の財政難を解決するための方策について悩んでいた。そんな彼の元にある日、隣国の研究員が訪れる。古代の遺跡を調べる研究者である少女ハナは、ユ国唯一の特色である「温泉」には合成すると特殊な効能を発揮する性質があることを明らかにする。
ハナの助力を得てアリマは「温泉を使った旅館の経営での財政再建」を目指すが、来るのはドラゴンや勇者など、一筋縄ではいかないお客様ばかり。ドタバタ&ほのぼのに入浴シーン大サービスで送る温泉ファンタジー営業開始!

行こう行こう〜湯の国へ〜♪
行こう行こう〜ハワイア(ここで突然音声が途切れる)
ああ〜温泉行きてえなあ!疲れた身体と心を温泉にどっぷり浸かって癒したい。誰か「ラノベ読みが行く!温泉ツアー」を企画して下さい。

思わず温泉に行きたくなるライトノベル、それがこの作品。
「異世界ファンタジー+温泉」という一見合わせて混ざると思えない題材を上手く活かして楽しませてくれる。戦乱の続く世界でありながら「攻めて得るものなし」と放置されている小国『ユ国』は、今日ものほほんと平和です。担当編集者のお話ではありません。
が、呑気なのは表面だけで、国の台所事情は火の車。それに気付き頭を抱える『ユ国』の王子アリマだったが、大国である『帝国』からやってきた研究者の少女ハナとの出逢いが転機となる。

『ユ国』山々に囲まれ、ドラゴンが巣食い、温泉以外これといった資源もない…って温泉があるじゃないですかー!
日頃から温泉の恩恵に預かっている『ユ国』の人々からすっぽり抜け落ちていた視点。帝国の研究者の中でも異端扱いされてきたハナの指摘によって、ようやく自国の観光資源に目を向けたアリマは、王宮を温泉旅館にして、お国を破綻から守るために奮闘する…のだが、まあそう簡単に行く訳もなく。

次々と襲いくるトラブル…現実の温泉宿では絶対に起こり得ない斜め上の問題に、アリマとハナの異性として意識し合っている二人が解決しようと力を合わせる様は、温泉以上に心を温かくしてくれる。また温泉の効能に魔法の要素を加えて、ファンタジー世界らしさを描き出しているところが上手い。しかし温泉に不思議な力があることから、余計トラブルを招くことに繋がるのはご愛嬌ということで。

そして温泉ということは必ずあります、そうラッキースケベです!温泉といったら裸の付き合い、裸の付き合いといったら混浴でしょ。ユフィやミササはともかく、恥じらいながらも負けまいと混浴に挑むハナが可愛くてもう…アリマのポジションが羨ましすぎて殴る壁がなくなる。

温泉がキッカケで戦争にまで発展するが、この物語に血生臭い臭いは似合わない。温泉にでも入って汗と一緒に全て水ならぬお湯に流してしまえばいい…とは流石にならないが、温泉の効能は戦争すらも止めてしまう力があると示して恐ろしさを感じてしまったぞ…笑ったけど。