飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「最果ての東 1st end 鼓動も止まる弾丸のスピードで」感想

最果ての東 1st end 鼓動も止まる弾丸のスピードで (講談社ラノベ文庫)

〈あらすじ〉
1915年。罹患者が発熱し血液を欲するという奇病が爆発的に流行した。
死をまぬがれた五億五千万人は快復せず、自傷したり他者を傷つけてまで血を啜ろうとするその存在を、人々は畏怖を込めて"吸血種"(ヴァンパイア)と呼んだ。
吸血種と戦うため、人類は人類再生教団を結成、徐々にその力で人類側を勝利に導いた。
それから約百年。第七十六使徒先遣隊の第四教僕隊としてリアン・ハートは"最果ての東"と呼ばれる地に降り立つ 。

十文字青さんとTHORES柴本さんのTwitter上での交流から発展し、こうして形になった物語。Twitter凄い。それを企画から形にしていまう編集も凄い。題材が『吸血鬼』ということに、必然めいたものを感じたのは僕だけでしょうか?

およそ百年前に発症した奇病によって人類の中に産み落とされた『吸血種』たち。その牙で人の血を啜る彼等に対抗するため、『人類再生教団』の旗の元、戦い、勝利した。そして現代。そんな『人類再生教団』に憧れた少年リアンは使徒となり、志願してある場所に向かっていた。教団が支配する壁のこちら側ではなく、反対側…『最果ての東』と呼ばれるそこは、人と吸血種が共存また争い続ける場所であった。

潔癖な倫理観を持ち、敬虔な使徒であるリアン少年が、退廃し汚れ切った場所『最果ての東』の現状を目にして、徐々に染まって行く様を愉快な気持ちで見守ってしまう僕は、相当に性格が悪い。
しかし僕なんかよりも、酷い人間と、吸血種が揃っているのがここ『最果ての東』だ。リアンが所属することになる『第四教僕隊』のメンバーは、リアンの開いた口が塞がらないほど、暴力的であったり、女の尻ばかり見ていたり、思う様酒・タバコを煽っていたり、はたまたリアンを上回るほど潔癖だったりと、一癖も二癖も…それ以上に癖のあるメンツが顔を並べている。

そんな『第四教僕隊』と共に、物騒な人間と吸血種が入り混じる街での生活が始まるが、それが穏やかなもののはずがない。人間と吸血種の抗争に巻き込まれ、否応無く彼等と行動を共にすることになるリアンは、慣れとは恐ろしいもので、性格はそのままに、諦めにも似た胸中で、『最果ての東』の汚さを受け止めて行く。

それでも『最果ての東』で生きる、人あるいは吸血種の複雑な心まで受け止めきれず思い悩むリアン…彼の心は、このまま真っ直ぐ成長していくのか、あるいは耐えきれずに歪んで行くのか。
そして歪みはリアンだけではなく、その周囲にも及ぶ。まだ始まりの物語だ。本当の幕開けはこれからになる…。