「聖断罪ドロシー 3 きみへとつづく長い道」感想
〈あらすじ〉
最大の武器を失ったカルアはドロシーを守るため自らを捧げる!
妖艶な女魔法使いエルチネに、魔法の半永久触媒である籠手を奪われたカルア。
魔法の行使が制限されながらも、エルチネを追うカルアとドロシーだったが、一方で帝国の執拗な追っ手もせまっており!?
終わりは突然やってくる。
ドロシーとカルアの旅はまだ続くかもしれないが、僕たちが彼等の背中を見守ることが出来るのは…これが最後なのだろう。
物語の終結には慣れているつもりでいたけれど、やはり残念な気持ちになる。
ドロシーに常に付きまとっていた問題。いや、そもそもそれがあったからこその逃避行。魔王の力。魔王の血。その暴走は周囲に暴力を振り撒きながらも、カルアと偶然に助けられて事なきを得ることが多い。
だが今回は違った。仲間を傷つけ、殺す気のなかったシズを殺して。ドロシーの中に溜まった負の感情は彼女を押し潰し、疲弊させて行く。
そんな状態のドロシーを見失い、心と身体を痛めつけながら次第に自分を擦り減らして行くカルアもまた、全ての責任をエルチネに押し付けて黒い感情に飲み込まれる。この負の連鎖。これまでドロシーとカルアは極力人を傷つけずに…そもそもドロシーの願いは「人助け」にあるのだから、人を傷つける訳もなく…それだけにこの展開には動揺したが、思えばこれが十文字青らしさなんだよなあ。この物語の優しさに慣れてしまっていたんだね。
こんなにもお互いを大切に思っているのに、どうして二人の距離は縮まらないのか。どうして決定的な溝があるのか。ドロシーとカルア。二人の旅は本来、心をぶつけ合いながらも分かり合い、主従ではない本当の関係を見つけていかなくてはならなかった。その結末を最後まで追いかけられないのは…最初に言った通り、とても残念。二人の逃避行。読者もまた彼と彼女の行く末を見逃してしまったようだ。