飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ブラック・ブレット 5 逃亡犯、里見蓮太郎」感想

ブラック・ブレット (5) 逃亡犯、里見蓮太郎 (電撃文庫)

〈あらすじ〉
第三次関東会戦の騒乱も落ち着き、天童民間警備会社には静かな毎日が戻っていた。蓮太郎や木更、延珠、そしてティナは、楽しく平和な時間を満喫する。
しかし蓮太郎のもとへ、小学校時代の友人が久しぶりに訪ねてきたことをきっかけに、彼らの日常は暗転する……。
いわれなき殺人の容疑をかけられることになった蓮太郎。孤立無援の状態で決死の逃亡を図るものの、かつてない強敵が次々と襲いかかってきて――。
待望の第5巻は、これまで以上に緊張感満載のノンストップ・アクション!

圧倒的な力で人を恐怖のどん底に陥れたアンデバランとは別種の絶望感が、蓮太郎ただひとりを狙い、真綿で首を絞めるように心を蝕んでいく。蓮太郎個人の資質が改めて試される一冊だった。

結局のところ、人の敵はガストレアではなく同じ人なのだろうか?
木更の闇を知った蓮太郎が、彼女との隔たりを感じ鬱屈とした想いを胸に溜め込んでいく。その燻る想いを上手く消化出来ずに…あるいは消化しようという気がないのか…木更に辛く当たってしまう蓮太郎の不器用なことよ。しかし今のところ、どれだけ蓮太郎が器用に木更と触れ合っても、根本的な問題の解決には至らないとは思う。これもまた、ひとつの絶望か。

蓮太郎の過去にも関わりがある陰謀が知らぬ間に走り出していて、それに巻き込まれた蓮太郎はシナリオが用意されていたかのように嵌められていく様は、現実感があるだけに恐怖だ。アルデバランが物理的な恐怖とするなら、今回の陰謀は心理面から突き込んでくるもの。暴力とは違う。悪意の質としては最悪。疲弊していく蓮太郎は、そのまま絶望の淵で終わりを迎えるかに思えたが、やられっ放しは誰だって嫌だ。勿論読んでるコッチだって、このまま済ませる訳にはいかねえぞ、と。復活した蓮太郎の反撃はこれから…予想通り、上下巻構成か…しかし櫃間の小物感は酷いなあ(笑)