飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「桃音しおんのラノベ日記1 11歳の創作活動」感想

桃音しおんのラノベ日記1 11歳の創作活動 (講談社ラノベ文庫)

〈あらすじ〉
あさのハジメ×たにはらなつきが贈る新シリーズ!
桃音しおん それは正体不明のまま大ブレイクしたラノベ作家の名前だ。
一方僕は、高校生作家としてデビューしたはいいものの、
三巻打ち切りから次回作も出せずにくすぶったまま。
そんなある日、僕は担当編集さんから呼び出しを受ける。
「突然だが、きみは小学生に興味があるか?」いやいやどういうことですか!?
そのまま担当さんに押されて、僕は桃音しおんの執筆活動を手伝いに行くことになる。
そして出会ったのは、まるで人形のように可憐な、全裸の、小学生の少女で !?
「今夜……わたしの家に来ませんか?
おとーさんとおかーさんは、お仕事でいませんので」
平凡高校生×天才小学生が織りなす、
ラノベ業界の裏に迫る(?)青春ラブコメ!

この先のスケジュールを見る限り、暫く某カリスマ編集無双が続きそうだ。しかし…なんつー営業力なんだよ(笑)

新人賞を受賞し、ライトノベル作家として歩み始めたもののデビュー作の売り上げは芳しくなく三巻打ち切り。新作を出そうにも幾つプロットを書いても編集会議を通らず苦悩するのが高校生ライトノベル作家の椎名歩。スランプに陥った歩を見た担当編集の桃香は、ある人物を引き合わせる。歩とは正反対、デビュー作が爆発的ヒットを飛ばした謎多き作家・桃音しおん。彼女と対面した歩は驚愕することになる。桃音しおんは歩よりも年下…小学五年生の美少女だったのだから。次回作を生み出そうとするものの何を書いていいか分からない売れっ子作家と、書きたいことはあるのにプロットが通らない売れない作家の二人は互いに交流を通し刺激し合い、次第に強い仲間意識を持つようになるのだが……。

ライトノベル作家と編集の状況、在り方うをフィクション多めではあるが、あさのさんらしい軽い文体で分かりやすく伝えてくれる。
僕は創作者ではないけれど、ライトノベル作家に限らず、デビューするよりもデビューしてから本を出し続けることの方が格段に苦労するのは分かる。デビューはゴールではなく、スタートラインに立つということ。新人賞を受賞しても続き、あるいは新作が出ないのはこの辺りの意識が不足していたのかな、と。上からモノ言ってすいません、反省してます。

売れっ子ラノベ作家はロリロリの小学生女子だった!衝撃の事実を知ることになった歩の作家人生は大きく変化していく。見た目はあどけない少女でも、実績ある作家。その事実を受け入れ、しおんと過ごす日常はある意味危険の連続。具体的にはロリコンだと思われてポリスメンに捕まるのも時間の問題。桃香さんが陥れようとしているとしか思えん。

作家として、創作者として。歩としおん、二人の大きな違いは年齢でも売り上げでもなく意識の持ち方。歩はプロットが通らず書きたいのに書けない状況、対してしおんはそもそも書きたいことが自分自身分かっていない。作家として、致命的な状況。しかし歩に触発され、書きたいことを見つけたしおんの爆発力は凄まじく、それを目撃することになった歩の心が折れてしまうほど。創作者として相手を尊敬するのではなく、負けを認めてしまった。そんな人に面白い物語が書けるのだろうか?

状況の異なる二人のライトノベル作家がいかなる「答え」を見つけて行くのか。それがこの物語の楽しむポイントだろう。夢と希望を生み出すライトノベル作家もまた、夢と希望を抱いて物語を紡いで頂きたい。