飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「鮎原夜波はよく濡れる」感想

鮎原夜波はよく濡れる (電撃文庫)

〈あらすじ〉
 真夜中のプールで溺れた少年・渚野陽平は、気が付けば辺り一面が海に沈んだ学校の屋上に――。
 その世界で出会ったのは、どこかふわふわぼんやりした、海を漂うクラゲのような雰囲気の少女・鮎原夜波。
 彼女は、水に濡れれば濡れるほど強大な力を得ることができる戦闘魔法装束《クローク》を纏い、怪物たちと戦いを繰り広げる「ウンディーネの戦士」だった……。
『C3−シーキューブ−』の水瀬葉月が贈る“濡れ透けアクション”開幕!

タイトルを違う意味として捉えてしまう。具体的にはエッチな方面に…と、思っていたらあとがきでネタにしてました。
とはいえ、その印象は遠からず。水も滴るイイ男、ならぬ、イイ乙女。スケスケ濡れ濡れの美少女たちの姿を堪能して欲しい。

両親の都合によって今まで過ごしてきた地を離れることになった渚野陽平。友達も知人もいない高校に入学する日が迫る中、陽平は奇妙な少女と出会う。びしょびしょに濡れた儚い印象の美少女・夜波。夜の学校のプールで泳いでいた夜波が溺れているのを目撃した陽平は、カナヅチであるにも関わらず彼女を助けようとするが、当然の如く溺れてしまい…目覚めた次の瞬間、そこは別の世界だった。地平線まで続く水に支配された世界に、連れてこられた陽平は、この世界に住むウィンディーネとその戦士である夜波たちが、陽平たちの世界を襲う敵『ヴォジャノーイ』と戦っていることを知る。

此の世界ではない何処か。既に滅びてしまった世界から、未来のある世界を救うためにやってくる戦士たちは…水に濡れた美少女たちだった。
水難事故で妹を亡くした主人公の陽平。水に対して大きなトラウマのある彼がやってきてしまったのは水ばかりの世界。陽平にとっては地獄のような世界だ。その世界に陽平を導いてしまったのは、美しい容姿とおかしな言動により何処か浮世離れした印象を他者に抱かせる不思議な少女の夜波。独特なテンションで周囲に応じる夜波に戸惑う陽平であったが、触れるに連れ彼女の真っ直ぐな生き方に惹かれていくことになる。

最初は呆然としながら、そして徐々に別世界の状況を受け入れていく感覚が実に面白い。また、ひ弱な少女たちが、ウィンディーネの水を使っての魔力を受け、戦闘衣『クローク』を纏って水の魔獣ともいえるヴォジャノーイと戦う姿が美しい。異常な状況に巻き込まれただけの陽平が、戦う意味を手に入れ、彼女たちと共に戦いに出る展開は良かったかと。陽平の命に関わる「理由付け」は納得できる。

物語は開けたばかりだ。世界観を理解し、陽平が、夜波が、真摯に戦う意味を見つけた中、どんな展開を見せてくれるのか非常に楽しみ。