飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「グランクレスト・アデプト 無色の聖女、蒼炎の剣士」感想

グランクレスト・アデプト  無色の聖女、蒼炎の剣士 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
混沌がすべてを支配する大陸では、君主たちによる富と土地を巡る戦乱が続いていた。戦場の中心にいた者たち、それは己に混沌を刻み、異能の力を振るう傭兵――邪紋使い。若き傭兵ロイは戦場で敵を倒し、その混沌、異能の力を奪い続けていた。すべては、ただ「強くなるため」に。
 そんな彼の前で突如として収束を始めた極大級混沌。龍、魔神王クラスの混沌災害をもたらすはずが――「あれ、ここってどこ?」――現れたのは、この世界を何も知らない少女!?
『グランクレスト戦記』の水野良が監修するシェアード戦記外伝、神速のバトルアーツファンタジー、開幕!

水野良さんが監修を務めるシェアード・ワールド。外伝トップバッターとなる『アデプト』を担当するのは、GA文庫『あやかしマニアックス!』の夏季のたねさん。意外な作家ではあるが、しっかりした作品を仕上げる方なので読む前から不安はなかった。

混沌を払う『君主』でもなく、混沌を超常現象に変える『魔法使い』でもなく。主人公の少年ロイは、混沌を力にする『邪紋使い』の傭兵。『君主』に雇われ、家族ともいる傭兵団と共に圧政を敷く『君主』を追い払うことに成功したロイは、その日、突如混沌から出現した少女と出会う。真璃と名乗った少女は、この世界とは違う世界からやってきたらしく、その明るい性格がロイの頑なな心を氷解させていく。

この『アデプト』だけでも楽しむことが出来るが、やはり水野良さんの『グランクレスト戦記』の下地があってこその物語であると思う。『グランクレスト戦記』で世界観を知っていればぐっと濃密度は上がる。また描かれる中心人物は、『グランクレスト戦記』ではさほどスポットの当たらなかった『邪紋使い』であり、傭兵だ。ならず者の印象が強い傭兵だが、ロイたちの絆の深さを物語を通して知ることになる。『グランクレスト戦記』本編とは違い、非常に分かりやすい物語だったと感じる。

そして設定上、面白いのは少女・真璃の登場により『グランクレスト戦記』は現代との繋がりを示しているということ。本編、あるいは他の外伝作品でも共通の設定が活かされるか分からないが…まあ今回の話だけでは、『グランクレスト戦記』の世界と現代との関わりはそれほど大きいものではないように思えるが、世界観さえ遵守すればある程度自由に書ける、のかな?