飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「祓魔学園の背教者 ―祭壇の聖女― 」感想

祓魔学園の背教者 ―祭壇の聖女― (電撃文庫)

〈あらすじ〉
祓魔師――それは信仰する神仏精霊を具現化し、悪魔契約者と戦う選ばれた聖職者。
逢沢拓真は信仰を持たない身でありながら、祓魔師を養成する《祓魔学園》の門戸を叩く。そこで彼が出会ったのは強大な力を持ちながらも邪教の信徒とされ、その力を禁じられた少女ミトラルカ。
禁忌の力を狙い来る敵から“世界最強の聖女”を護る。信じる神を持たない背教者の戦いが今、幕を開けた──。

クリスマスでサンタクロースを待ち望んだと思ったら正月には神社に行って御参り。結婚式を神父のもと教会で挙げたと思ったら、葬式の後は寺にゆく。「宗教」に関しては節操のない日本人。それが良いのか、悪いのか。日本という国に身を置く僕には判断がつかないけど、この気楽な感じは良いな、と思う。そんな宗教を取り扱う学園バトルファンタジーです…どんな紹介の仕方だよ(笑)

神仏精霊を使役して、魔を滅する『祓魔師』…しかし無神論者の逢沢拓真は精霊を従えない珍しい祓魔師だ。聖職者協会公認の祓魔師になるため、半ば脅される形で宗教都市の祓魔学園にやってきた拓真は、世話役の祓魔師にある依頼をされる。それは世界最強の神仏精霊を有する邪教の少女・ミトラの護衛。無神論者と邪教徒。異端の少年少女を悪意ある陰謀が襲いかかる!

「宗教都市」と呼ばれるだけに世界の大小様々な宗教がせめぎ合う中、神の存在なんて欠片も信じていない少年と、聖職者協会に「邪教」と認定されたマイトレヤ教を信仰する銀髪美少女が織り成す物語。内容はまさに「王道」をゆき、主人公・拓真の冷めた性格とは違い、非常に熱い展開を見せつけてくれる。

「邪教」を信仰していることで迫害を受けるミトラ。宗教の名のもとに振りかざされる悪意がミトラの心を脅かす。護衛者という立場ではなく、ひとりの人としてミトラを襲う悪意を振り払おうとする拓真は、冷たく見えるが実は内面は温かい男であるとここで理解する。最強の神仏精霊を宿しながら、邪教ゆえにそれを禁じられているミトラを付け狙う不条理を跳ね返す強さを拓真は持っている。またミトラも、そんな拓真の決して引かない姿勢に影響され、前を向いて、胸を張って生きようとする。互いが互いを刺激し、成長していくこの物語から目が離せない。