飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「ガリレオの魔法陣」感想

ガリレオの魔法陣 (集英社スーパーダッシュ文庫)

〈あらすじ〉
科学(ホログラム)が魔法(サークル)を技術(プログラム)にしたCircle Hologram(サークル・ホログラム)--それは多層レイヤー構造で描かれたDTP魔法陣と立体映像技術の進歩により生まれた最先端のテクノロジー。
光の模様によって空間エネルギーを絡めとり、あらゆる現象を引き起こす、この科学の魔法陣は、世界に未知の可能性と新たな火種を生んだ。遺産魔法陣(エンシェント・サークル)--遺跡や文献から発見される太古の魔法陣。いまだ現代魔法陣の百年先を行くといわれる、それらの争奪戦が始まったのだ。過去と魔法が、未来と科学と、歪(いびつ)に連なった世界で、ペンタブで魔法陣を描く“ホログラマー”レイル)・レッド・ヘミングウェイが、彼の魔法陣を身にまとい戦う“サーキュリスト”の映像人間シャオの冒険が始まる!

ブログのコメントにてオススメ頂いた『ガリレオの魔法陣』読了しました。結構な量の新作を読んでいるつもりではいるけれど、当然読めていない新作の方が多い訳です。一度読み零してしまうとをその後手を出すキッカケがなく、長期シリーズになって更にハードルが上がる…なんてことは良くあるので、こうして1巻の時点でオススメして頂けると背中を押されて助かります。

では内容の方へ。
遥か昔から存在する魔法陣と科学を融合させた現代魔法陣が社会の要となっている世界。まるで魔法のように科学を行使する時代で、ペンタブレッドで魔法陣を描き出す『ホログラマー』のレイルは、相棒の『サーキュリスト』…ホログラマーの作成した魔法陣を使い戦うシャオと共に、あるものを強奪したテロ組織を追うことになる。現代魔法陣の基礎となり、未だ解明できない圧倒的な力を持つ遺産魔法陣。そのひとつを盗み出したテロ組織のホログラマーとサーキュリストとのバトルが始まる!

奇抜な設定とまでは言えないものの、かなり面白い設定だな、というのが正直な感想。科学と魔法を融合させた魔法陣を軸に、それを作り出す者と使う者がコンビを組んで戦うのが基本スタイルらしいが、結構型破りな者もいるので、絶対ではないらしい。設定を魅せる文庫の方はちょっと癖があるため、読んで飲み込むのに時間がかかるかと思う。複雑な設定のもとに成り立つ物語だけに、特に魔法陣に関する説明をしなくてはならないのだろうけど、会話文もなく地の文だけでかなりのページ読まされるところもあったのが辛かったかな。「エンターテイメント小説」という面から考えると、ここで投げてしまう読者がいてもおかしくない。ただ、後半を読めば分かるが大切な説明でもあるので、設定上仕方のないことなのかな、とも思った。

次はキャラクターについて。
根暗青年のレイルにかなりイライラさせられます。とはいっても、あえてそういう描き方をしているというのは感じるし、レイルに接した赤の他人が彼を苛立つ思いで見ている描写のあるので、読者が抱くこの感情は正しいものである。その分、相棒のホログラムヒューマノイドにして「ロリババア」ことシャオの、思ったことを直ぐに口に出す性格に救われる。シャオにケツを叩かれながら前に進むレイルの「情けない姿」というのは、ある意味終盤に向けた演出。後半からはヒロインと呼べる金髪美少女のエルヴァが登場。ホログラマーとしてもサーキュリストとしても非常に優秀なエルヴァが、それまでの経緯を見てレイルに惚れる要素は皆無に思えるが、実はレイルは……と、いうところがひとつスカッとする場面である。シャオにはそれが分かっていたこともあって、しきりにレイルとエルヴァをくっつけようとしているので、まあ彼女を「ヒロイン」として扱うのは違うのかなあ、と(笑)

全体的には読みにくさを抱えながらも、最後まで読めば面白さの伝わってくる作品ではあった。もう少し物語展開を短くして纏めた方が疲れずに読めるような気もするけれど、これはこれで良かったかと。