飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔法の子」感想

魔法の子 (富士見ファンタジア文庫)

〈あらすじ〉
五十年前突如発現した人類の新しい力、魔法。ときを同じくして、のちに“特殊災害指定生物”と名付けられる化け物達が現れ始めた――。
魔法を疎む相馬アキラは召還領域の復活が認められ、防衛型教育都市“時島”へ連行されてしまう。そこで妹の凜と五年ぶりの再会を果たし、自身の世話係となる桜田ノアと出会う。しかし魔法の復活を祝福するノアと衝突し、決闘をすることに…
…。そんな中、巨大な災害が島に近づいてきて――!? 
魔法の力がもたらすのは繁栄か、災いか? 少年少女の想いが交差する、現代ダークファンタジー!!

富士見ファンタジア文庫は公式発売日には電子書籍が配信される、ということを知り、『初電子書籍』に選んだ作品はコチラ。『魔法の子』、という短いタイトルに込められた想いを紐解いていく作品。

魔法。「あちら」の世界から「こちら」の世界に力を喚び出す異能。しかしその力は子供から大人になるにつれ、失われていく。主人公のアキラは魔法の力を失うも、五年前に行方不明になった妹・小夜を探すため全国を旅していた。そのアキラに魔法の力が戻ったことから妹捜しは強制終了となり、魔法を使える子供を閉じ込めておくための島…『時島』に再びやってくることになる。そこでもうひとりの妹・凜と再会し、魔法を尊いものだと考えるノアと出会うのだが、魔法が大嫌いなアキラはノアと対立することになる。

自我に目覚めるよりも早く、使い方によっては猛威を振るう魔法の力が宿る子供たちによって、社会は混乱していた。魔法を使える子供たちは隔離され、ひとつの島に閉じ込めて管理されている。そしてもうひとつ、魔法を使う子供たち以外にも『特殊災害指定生物』という怪物の脅威も存在する…そんな世界観だ。

一年ごとに十数パーセントの子供が魔法の力を失い、『時島』から追い出される中で、再び魔法の力を手に入れてしまう稀有な子供のアキラ。妹の小夜を初め、魔法によって人生をメチャクチャにされてしまう人が多いこともあり、「魔法なんか糞食らえだ」という考えに行き着いたアキラにとって、『時島』は地獄のような空間。魔法によって運命を狂わされたアキラの苛立ちを募らせるのが、アキラの世話役となる美少女ノア。魔法を特別視するノアとアキラの想いは真っ向から対立し、決闘騒ぎにまで発展するが、これをキッカケに二人の距離は縮まっていく。

『特殊災害指定生物』を含め、「魔法とは子供たちにとって一体なんなのか?」を思考していくところに深みがある。忌み嫌う力なのか、それとも尊ぶべき偉大なる力なのか。何にしてもその運命を振り回す巨大な力に対して、アキラが、ノアが、どう向き合っていくのかを追いかけるのは非常に面白い。