飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「魔法少女育成計画 limited (前)」感想

魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)

〈あらすじ〉
「あなたたちは魔法の才能を持っているのよ」放課後の理科準備室に現れた妖精は、そう告げると、室内にいた女子中学生たちを魔法少女へと変えてしまった。「魔法少女になって、悪い魔法使いからわたしを助けて!」マンガやアニメのような展開に色めき立つ少女たち。誕生したばかりの7人の魔法少女は、妖精に協力することを約束するが……。話題のマジカルサスペンスバトルの第三幕、前・後編2カ月連続刊行!

敢行ペース良いなあ。ミステリ要素もあるブラックな内容なので、書き上げるのに結構時間がかかりそうだと思うのだが。しかしキャラクターが膨大になってきて、「あれ?この魔法少女、前にも出てきてたの?」と首を傾げることが増えつつある。

追う者と追われる者。
ある日の放課後、集められた少女たちと教師の七名は、トコと名乗る妖精によって魔法少女にさせられてしまう。訳も分からず魔法少女となり、巨大な力を手に入れることになった彼女達は、何者かに追われているというトコに命令され守ることになる。不意をついて一度は追手を撃退した新米魔法少女たちであったが、トコを殺人犯として追う「魔法の国」側の魔法少女たちは増援を呼び結界を貼って、トコたちを追い詰めようとする。結界が解けるまで24時間。魔法少女たちはその時間を逃げ、生き抜くことができるのか?

今回は時間制限付きの「鬼ごっこ」という訳ですか。これまでもそうではあったが、状況も知らずに魔法少女になり、事態に巻き込まれて行く流れ。しかし今回はこれまで以上に新米魔法少女側に「戦う理由」がない。あるとすれば一度手に入れた魔法という力を手放したくない想い。それがどれだけ強い想いなのか分からないが、それをゆっくり考えている間もなく、怒涛の展開に呑まれていく。あるいは一度でも追手を倒してしまったのがいけないのか、楽観的な新米魔法少女たちの言動が不安を煽る。

また追手側も大きな理由もなく、任務としてトコを追っている者が多い。追手側も巻き込まれている。「魔法少女」という夢見がちなワードとは違い、酷い現実を突きつけてきてこの辺り読むのが辛い。追手側も追われる側の魔法少女も過半が目的意識が欠如しているので、奇妙なほど緊張感がない。こうして見てみると、酷い言動の目立つトコだけが悪役に感じるし、それは間違いのない感覚なのだろうけど、そのトコが気にかける相棒…魔法少女たちの中に紛れ込み、事態を掻き回している。さて、どの魔法少女がトコの「協力者」なのか。炙り出されるまでに、毎度お馴染み酷い展開が待っていそうだ。