「魔王と姫と叡智の書」感想
〈あらすじ〉
転職して美人のお嫁さんと静かに暮らしたい。そんな夢を抱く魔王は、ウザい側近の殺し方に悩むだけの不毛な日々を送っていたが――。攫われてきた姫・アンジェが超タイプ! しかもなぜか初めから好感度激高で、春到来!! と思いきや、姫の趣味は成人向け漫画を描くことで!?
痴的好奇心旺盛の残念姫と、なし崩しで原稿を手伝っちゃう魔王のイチャラブファンタジー、開幕!!
ガッツリ骨太な物語を読む前or読んだ後に読みたいジャンル。それがラブコメです。サクッとスナック菓子感覚で読めて楽しめるラブコメは結構「当たり」を引くのが難しかったりする中で、新人賞でありながら非常に読みやすく、主人公・ヒロイン共に親しみやすい作品でした。
魔王でありながら、魔王らしい外道を行わず平穏な日々を過ごすディー。事あるごとに部下が攫ってくるお姫様たちを手篭めにすることもなく、魔王らしくしろ、と小言を言われては、転職して可愛い女の子と結婚したいと思う純真な魔王であった。しかし部下がまた攫ってきたお姫様は、魔王であるディーのことを恐るどころか興味津々。アンジェという名前のお姫様はディーのタイプの女性であることから、心惹かれそうになるのだが…アンジェは変わった趣味を持っていて、ディーを困らせる。
ん? 魔王を題材にしたファンタジー?
もしここが何かの店だったら、思わず外に出て「ファンタジー」の看板を確認しに行くほど、ファンタジーらしさを失っていく世界観はいったい何なのだろうか…。
それというのも、可愛いお姫様アンジェの変わった趣味とは「漫画を書くこと」…しかもただの漫画ではなく、男と女が絡み合う濃厚なもの。純真魔王のディーにそのような知識も免疫もないため、動揺しまくり。およそアンジェとエロ漫画が結びつかないだけに、ディーの頭は疑問符でいっぱいになる。そんなディーを可愛い容姿からエロ漫画に関わる下ネタが放たれ、攻めに攻められる狼狽えるディーの姿が可笑しかったりする。
下ネタを連発するものの、それは漫画に結びつく知識とそれにかける熱い想いからきた言葉のため、ディーが下ネタで逆襲すると顔を真っ赤にする場面も。アンジェ、お約束を分かってる可愛い子だな。アンジェのエロ漫画マシンガントークのおかげ(?)で、すっかりファンタジー世界であることを忘れてしまい、魔王というよりも単なるアシスタントに成り下がっているところにディーの順応性の高さを見る。
全体的に軽いテンポの話だから、アンジェが何故漫画を書くようになったのか、からの締めの作業…シリアス描写が突然すぎたのは、まあ仕方が無いかな、とは思う。