飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「うちのクラスの頼りないラスボス」感想

うちのクラスの頼りないラスボス (HJ文庫)

うちのクラスの頼りないラスボス (HJ文庫)

〈あらすじ〉
「あなた、私の仲間にならない?」
『ラスボス』という『役割』を与えられた少女、塔ヶ崎夜子は、『脇役』の少年、涼希にそう告げた。
涼希の幼なじみの少女で新入生唯一の『主人公』桜神雛に無謀な戦いを挑む夜子に涼希は徐々に魅かれていく。
あらゆる事が起こり得る「まるで物語のような学園」で繰り広げられる『超劇的エンターテインメント』登場!

望公太さんの作品は『異能バトルは日常の中で』もそうだけど非日常という状況下での緩い日常を描くのが上手いなあ、と。
読んでて和んだ。

『主人公』それは勝利を約束された栄光ある肩書きである…たぶん。
「キャラクターの立った人材を育成する」特殊な学校では生徒それぞれに『役割』が振られる。学校に七人しかいない『主人公』の役割…そして一年生唯一の『主人公』である雛を幼馴染に持つ『脇役』の涼希はその『役割』をしっかり演じるほどのモブっぷりを発揮していた。
そんな涼希に転機が訪れる。『主人公』とは全く正反対の肩書きともいえる『ラスボス』塔ヶ崎に気に入られてしまったこと「七人の主人公を倒したい」彼女のペースに巻き込まれて行く。

『主人公』と『ラスボス』の間に挟まれてしまう『脇役』の苦難。しかし肩書きが示すほど恐ろしい展開にはならない。
『ラスボス』とはいってもそれらしい口調だけで、中身は残念な思考を持つ美少女ちゃん。一皮向くと小心者が顔を出すところが可愛い。その塔ヶ崎の残念なペースに乗せられながらも彼女の相棒が板についてくる涼希。『ラスボス』と『脇役』の関係にヤキモキする雛もなかなか可愛い存在で。それでも『主人公』らしく…と、言っていいのか。『ラスボス』にすらエールを送る雛の元気いっぱいさは読んでいて心地良い。『主人公』と『ラスボス』の勝負はどれも平和そのもの。中には残念すぎる内容の勝負もあって、そんな勝負に勝利して勝ち誇る塔ヶ崎にはもう苦笑するしかない。

『主人公』そして『ラスボス』…それぞれの枠に押し込まれて悩むこともある。人であることは変わりないのだから。そんな二人の間に立って支える涼希の存在は、この三人の関係だけでみれば立派な『主人公』に見えてくる。役に押し込まれて思考することを捨ててはいけない。考えることで人は成長する…「キャラクター立つ」である!ということですよね。

まだまだこれからおかしな肩書きを持つキャラクターが増えそう。『ラスボス』とはまた別の残念さを持っていそうな他の『主人公』たちの登場に期待したい。