飼い犬にかまれ続けて

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「白銀の救世機」感想

白銀の救世機 (MF文庫J)

白銀の救世機 (MF文庫J)

〈あらすじ〉
「応えて! ゼストマーグ! あたしの想いを力に変え、勝利へ導いて!!」
突如として現れた謎の生命体・XENOに支配された世界。
人類は感情を失った生物、ゼノイドへと進化を遂げ、生き残っていた。
落ちこぼれの少年、アルツはゼノイドとして生き残るための選別試験の途中、コールドスリープしていた旧人類のナユキと救世兵器『ゼストマーグ』と出会い、自分と世界を変える戦いに巻き込まれていく……。
《――時は来た。『白銀新生』の扉を開け――》
新人賞最優秀賞受賞作家が贈る、絆で闘うヘヴィバトルアクション、堂々スタート!

面白かった!
物語の方向性がしっかり定まっているとやっぱり読みやすい。しかもそれを新人が出来ているというのが期待できる。最初から最後まで楽しめた。

XENOと呼ばれる謎の生命体によって世界は蹂躙されていた。雪に覆われた冬の世界に生き残っている新人類ゼノイドは、XENOに対抗するため特殊な機械鎧を纏って戦っていた。しかし機械鎧『ゼノ・トランサー』を操縦するには心の空白が不可欠であり、そのためゼノイドは感情のない機械のような『進化』を遂げていた。

そんなゼノイドたちがXENOと死闘を繰り広げる中、少年アルツはある感覚に悩まれていた。ゼノイドにはあり得ない感情を…心を持つアルツは、心を持つが故に『ゼノ・トランサー』をまともに操縦できない落ちこぼれ。
『不良品』として処分される寸前だったアルツは、旧人類の遺跡で眠っていたある少女に出会う。彼女の名前はナユキ。感情豊かなナユキと触れ合う内に、アルツは『人間』になりたいと願い始める。そしてアルツとナユキは人の心を武器にする『ゼストマーグ』を駆ってXENOを倒しながら、ある人物を探す。

感情のないゼノイドの中で生きる感情ある自分を異物と思いながらも、周囲の異常なまでの合理的な言動に違和感を持ち続けていたアルツ。常に思い悩んでいたアルツの心を解放してくれたのは、喜怒哀楽の感情をこれでもかと言うほど見せる少女ナユキだった。彼女に出会う前と後ではまるで別人のように感情に興味を持つアルツの姿は憑き物が落ちたようで、見ていて気持ちが良くなる。それほどアルツの悩みは深かった。
ナユキもまたゼノイドでありながら感情的には動く異質のアルツに興味を持ち、心に熱く滾る彼を認めて、人の心を力に変えて動かすゼストマーグを共に操る。

二人の信頼関係。『人間』としてはよちよち歩きの赤ん坊と同じ程度の感情表現するアルツに戸惑いながら、そしてアルツは感情の奥深さに心打たれながら。このコンビのやり取りは読んでいて実に面白い。この二人の影響を受けて、アルツと同じ『欠陥品』のゼノイドやアルツの妹リステルのように後天的に感情を持つ者が現れて次第に賑やかになっていくのが微笑ましいが、同時に感情がぶつかり合うことにも繋がる。このもどかしさも心に寄るもの…感情に不慣れなアルツがあれこれ思考しながらも絆を繋ごうと真っ直ぐ心をぶつける様が、アルツが人間であることを証明してくれる。

心が世界を救う。
今回で物語自体は纏まっているがシリーズ想定しているようで、明かされていない謎もいくつか。
アルツとナユキの関係はシリーズ展開すればますます面白いことになりそう。