飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「扉の魔術師の召喚契約 −その少女、最強につき−」感想

扉の魔術師の召喚契約<アドヴェント・ゲート> -その少女、最強につき- (HJ文庫)

扉の魔術師の召喚契約<アドヴェント・ゲート> -その少女、最強につき- (HJ文庫)

〈あらすじ〉
世界屈指の魔術師ロイは、史上初の《異世界召喚》を成功させた。
彼が呼び出したのは現代日本の女子高生にして、見るからにか弱そうな美少女・雛菊アヤメ。
だがその実態は、素手で超強力な魔術を打ち破れる位チートすぎる戦闘力の持ち主だった!!
そんなアヤメと行動を共にするうち、ロイは《最強の魔術師を決める戦い》に彼女とコンビで参加することに!?

空埜さん、これでシリーズ4作目になるんですね。第一回ノベルジャパン大賞の入賞者なのを考えると「HJ文庫というラノベレーベルを代表する作家」と言ってもいいんじゃないかと。HJ文庫のレベルを感じるには良い作家さんだと思います。

さて内容の方に入って行きましょう。
今回は取っ付きやすいファンタジー世界が舞台。魔術が当然のように存在する世界に召喚されたのは…現代日本の女子高生。彼女の名前は雛菊アヤメ。そしてアヤメを呼び出したことで史上初の異世界召喚に成功したことになる魔術師ロイ。見た目は可愛いアヤメに、ロイはとんでもないことを言い出す。
「俺のーー彼女になってくれっ!!」
しかしロイの願いは脆くも崩れ去る。アヤメは見た目通りの普通の女の子ではなかった。魔術師など物ともしない、文字通り「最強の女の子」だった。

「恋人が欲しい」という理由で異世界に呼び出されることになったアヤメ。いやあ、いい迷惑ですねえ(笑)巫山戯たことを抜かすロイを実力でねじ伏せて黙らせるアヤメさんマジ半端ないです。アヤメの適応能力は尋常ではなく、最初こそ動揺したものの直ぐ世界に馴染んでしまったことも含めて彼女は普通ではない。

どうにもアヤメに押されっぱなしのロイであるが「史上初の異世界召喚」を成功させただけあり、若く優秀な魔術師である。そのせいで嫉妬を買い、またその嫉妬に嫌気が差して人から距離を置いているロイに友達がいる訳もない。色眼鏡で自分を見る人間ばかりの中で、アヤメだけが何のフィルターも通さない真っ直ぐな言葉でロイを奮い立たせる。
尋常ならざる力を受け入れて育ってきたアヤメ。目を背け続けたロイ。アヤメの明るい性格もあって、二人の出会いは急速な心の成長を生み出す。二人の視点を交互に読者に見せることに、両者の想いが手に取るように分かる。

アヤメを現代に送り返す魔力を得るために、戦いの場に出るロイとアヤメ。知のロイと力のアヤメのコンビはバランス取れてるなあ…しかし本来ならば男女のポジション逆だよねえ。想いを同じくしたこともあって、惹かれ合っているのが分かる二人。いざ送り返してもアヤメが異世界に…と、いうよりもロイに未練たらたらだから帰れるはずもない。暫く二人の生活は続くのかな。シリーズ展開する作品前提のようで、さてアヤメさんの無双っぷりは次も読めるのかしら。