飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム」感想

アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム (電撃文庫)

アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム (電撃文庫)

〈あらすじ〉
「……あたしが巡り逢ったのは……最高の銃だったわ」
そう言ってアリスは逝った。わたしの名前はミスター・マグナム。
偉大なる魔女によって生み出された魔法の銃だ。
最悪の魔女《ゾォード》により引き起こされた災厄により相棒を失ったわたしは、不思議な運命により過去の世界で意識を取り戻す。
「アリス?」「そう。わたし、アリスよ」
目が覚めてサボテンと土煙が支配する荒野、スモーキー&ロックスで出逢ったのは、少女時代のかつての相棒だった。
だがこのアリスは、あのアリスとは何かが違う──。
「ほへー。ミスターって、すっごいんだね」
──アホだ、アホなのだ!
やがて《ライトニング・ワイルド》と呼ばれるはずの少女は、とんでもないおてんばアホ娘だったのだ……。
やれやれ。とはいえわたしは立ち上がる。かつての悲劇を起こさぬよう、新たな未来を切り開くために。

電撃小説大賞『大賞』受賞作。
「異色の経歴を持つ新人」というのをチラホラ耳にしていたけど、かなり衝撃でした。想像の斜め上を行っていたというか…とにかくあとがきは最後に読んでね!(笑)

相棒が喋る道具の物語は幾つもあり、当然それだけ設定として使われるのだから、それだけ魅力溢れる意思を持つ道具がいる訳で。
そしてこの物語の語り部であるミスター・マグナムもまた読者を惹きつける存在なのは間違いない。ミスター・マグナム…サラマンデル45マグナム。喋る魔法のリボルバー銃が彼の正体だ。
これは復讐の物語であると同時に世界を救う物語でもある。加えてミスターと彼の相棒アリスとのアホな会話を楽しむ物語でもある。

アリス。愛しいアリス。アホの娘アリス。
この物語を読み始めてまず戸惑うことがあると思う。点滅するように入れ替わる過去と未来のミスターの視点。その視点移動の意味理解した瞬間、エンジンがかかり一気に加速していく。偶然出会っただけの少女アリスが、何よりも大切な存在であることを確信したミスターの衝撃は計り知れないものがあっただろう。それだけ相棒アリスは…アホだったのだから。

おてんばで人の言うことなんか聞きやしないアリス。ミスターが真っ当なアドバイスや状況説明をしているのにお構いなし。自分のペースでひたすら話を進めて行く。これはとんでもないアホ娘だ…と溜息を吐きたくなるが、まるでそれを見越したかのようにミスターの見ているものをひょいと飛び越えて、物事の芯をしっかり捉えた発売をするのだから、この少女をどう評価して良いのか正直かなり困る。

何処か古めかしい世界観で展開される魔法絡みのガンアクション。なんだかんだ言いながらミスターの指示を的確にこなすアリスとのコンビは最高のものなんだと思う。二人の間にある確かな絆。ただの道具ではない、心を持つ存在であるとアリスが感じ、ミスターにとってアリスは掛け替えのない相棒である。この暖かい繋がりを見せつけられる場面こそが、この物語を一番楽しめるポイントだ。
渋いミスターと、アホ可愛いアリスとの繋がりを十分楽しませて頂きました。ありがとうございました。